ナミロビ

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「あなた、私を見ていたでしょう?」


「ヨホホ・・・ええ、そうですね。見ていました」



貴女は後ろにも目があるのでしょうか。
私はかげからこっそりと見ているだけでしたのに。



「いつも見ているわよね」


「よく、ご存じで」



気付かれていたとは、これまた驚きです。
気付かれてないものとばかり思っていました・・・しつこく見つめすぎたのが、いけなかったのでしょうか。



「見ていて楽しい?」


「とても・・・とても楽しいです。美しい貴女の仕草が、穏やかな表情が、見ているだけで幸せになります」



そして、同時に、とても苦しいです。
胸が。胸、無いんですけど。



「あら正直ね・・・私の事が好きなのかしら?」



ズバリと言い当ててくださるものです。
言うつもりもなかった想いを、言わされるハメになりました。



「・・・ええ。そうなりますね」


「そうなの・・・私が欲しいの?」


「ヨホホ・・・」


欲しいです。
でも、この体ではそのような事はかないません。
ですから、見ているだけで・・・

言いたい事を察してくださった貴女は、私に優しい断りの言葉をくれました。



「そう。でも、ごめんなさい。もう私は人のものなの。でも・・・」



見ている事は許してあげる。
そう言って、貴女は花のように笑いました。
花といっても、毒入りの花です。


見せてくださったのは、その相手の方と貴女の一夜。
なんという、残酷で幸せな事を、私に。
見ている事しかかなわぬ私に、ある意味想いを成就させていただくような事を。

相手の方は、女性でした。
驚きつつも、なんとなく分かっていたのです。
貴女がどのような時に、嬉しそうな顔をするか。
貴女がどのような時に、幸せそうな顔をするか。
それは、必ずと言っていいほど、その女性の方に関係する出来事でした。

めくるめく官能に満ち満ちた部屋を、私は覗き見ておりました。
今は、失われた肉体が疼きます。

でも心は、とても満たされておりました。


ありがとうございます。ロビンさん。

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