ナミロビ

□フラナミロビ
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ナミちゃんは、たまに、私以外の人を選ぶ。


・・・好きとか、嫌いとかそんな言葉じゃ語りつくせない関係になったのは、ずっと前。

私が冗談で軽いキスをしたら、キスし返してきた。
それなら、と舌を入れたら、入れ返されて。
そうくるなら。と、行為はどんどんエスカレートしていって。
関係を持った。

それから、いろいろあって。

ずっと一緒よ。
一生、愛してる。
うん、私も。
好き。大好き。

そんな言葉を囁きあうようになって。

私にだけ、見せる柔らかい笑顔に。
あのときの、とろけそうな顔に。
甘くて、高い声に。
強くて、優しい魂に。

とりこになった。

・・・それは私だけだったのか。

いつもは、とても仲が良いのに。なぜ・・・・?




アクアリウムバーのスツールに座って、本を読んでいたら、ナミが近付いてきた。

「今日の夜、ちょっと出てくるから」

ナミが、どこか遠くを見ながらロビンに告げた。

・・・ああ、またなのね。


知ってるのよ。とか言ったら、あなたはどんな顔をするのだろう。
言ったとしても、たぶん状況が変わるわけでもなさそうなので、言わないが。

たまに、ある。
ナミちゃんが、私以外の人に抱かれること。
そういう気分になるのか、それとも浮気性なのか。それはわからない。
理由なんて知らない。
ただ、そのコトを私が知っている。それだけ。

別に現場を目撃したわけではない。
なんとなくわかるだけ。勘。
いつも何か用事があるときは、細かく説明するくせに、そういう時だけ言葉が少なくなる。
用事の内容を言わない。
聞いても、あいまいにぼかす。
ウソをつくのが下手なのか、それともわざとなのか。

・・・酷いコね。

でも、知らないふりをする私。
なんでもない顔をして、送り出す。
何もなかった顔をして、帰ってくるナミちゃん。
何もなかったように、私にとろけるような笑顔をくれる。
それで保たれてる関係。
すがりついて「行かないで」なんて言ってみたくもあるけど。・・・言わない。

そう、自己完結して、笑顔を作った。

「そう。朝には帰ってくるんでしょう?」

「うん」

質問に、帰ってくる返事。
相変わらず、ナミはこちらを見ない。よそを向いている。
ナミの表情は読み取れないが、その言葉で少し安心する。


帰ってくるならそれで、いい。
この狭い船の中、帰ってこないなんてことは、絶対ないんだけど。
帰る場所はここだけのはずで・・・
でも不安になる心は止められなくて。
つい、帰りの確認だけは、してしまう。

そして元気をつけるように、ひとつ、ポンっと手をたたいた。

「丁度、良かったわ。私も今日用事があるのよ」


なんて、強がりを言ってみる。
本当は、用事などないのに、あえてのちょっとした反抗。
私も忙しい、とアプローチする。

「そうなんだ」


と、ナミは一言だけ返してきた。


ナミは、こちらに用事があるって言っても、いつも理由は聞いてこない。
伝えたければ言うだろうと思ってるのか、ただ単に聞くのがめんどうくさいのか。

私に興味がないのか、なんて考えたくはないけど。
ただ、今は、聞いてほしいと、ロビンはそう思った。
じゃないと、寂しくて心がつぶれそうだった。


空間を、沈黙が支配した。
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