ナミロビ
□ナミロビ
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「好き」
時が一瞬、止まったかと思った。
止まっていたのは、自分の呼吸。
吸ったまま、止めていた息を、吐き出す。
そして
「え?」
聞き直した私に、ナミちゃんは、にっこり笑って言った。
「私はロビンが好き。ロビンは私のコト、好き?」
直球。それも、剛速球。予告もなく投げられた球。
あなたは、それでいいでしょうけど、ね。
私に、その球が、受けれるかどうか。
そんな受け止めかねている私に、また投げられる球。
「友情の好き、でなく、特別の、好き、よ。
ロビンが好きなの」
私の瞳を覗きこむようにして、顔を少しかたむかせながらナミちゃんが言う。
突然すぎて、何だか、めまいがするわ。
告白のわりには、ひょうひょうとしているあなた。
本気なのか、からかっているのか、分からない。
Y or N。
・・・答えなくてはだめなのかしら。
「すぐに答えなくてもいいわ。これは1回目。
これから何度でも言うわ。ロビンが好きってね。
1回言うと、意識をするでしょ?
2回言うと、本気か考えるようになる。
何回も言ったら、「好きかも」って洗脳されてくれるかもしれないでしょ?
これは、そのきっかけとなる、大切な1回目。
私は、本当に、ロビンが好きなの」
瞳がゆらいでる。
ゆらゆら、きれい。すこし、うるんだ瞳、ゆらゆら。
そう、瞳は真実を語るって本当ね。
そのひょうひょうとした態度は、ナミちゃんの精一杯の強がりという所かしら。
本当に、ナミちゃんの気の強さったらないわね。
「ね、ナミちゃん。そういえば、こういう話を聞いた事があるわ」
ゆれている瞳に手をのばす。
まぶたから、ほっぺた、あごへと、手でなでていく。
あごに指をかけて、上を向かせる。
「ロビン?」
しぃ、と、もう片方の手の人差し指で黙らせて。・・・それから。
ナミちゃんの唇に、私の唇を重ねた。
・・・。
うん。
そう。
この感じ。
分かるわ。
私への、想い。
溢れる位、伝わってくる。
「キスひとつで、けっこう分かる事もあるって話、知ってるかしら?」
「ロビン!」
顔を真っ赤にしているナミちゃんを、放してあげる。
ナミちゃんは、本気。
私の事が、本当に好き。
でも、同時に不安をたくさん隠してて。
他にも、いろいろ。分かった事たくさん。
例えば、ナミちゃんって舌が長いのね。
なんて、キスの余韻にひたっていると。
唇に、また、あたたかい感触。
「うぅ。・・・ん・・・ふ」
はあ。
一時経って、やっと解放してもらって、息をつく。
2回目のキス。
この子、キス上手。受けるのも攻めるのも。
これで、私からしたのと、されたのと一回ずつ、おあいこ。
だから、分かる事がある。
きっと合う、私達。でも・・・
なんて考えていたら、いつの間にかベッドに押し倒されていた。
あらあら。
「ちょっと、ナミちゃん?」
焦って、手で押し戻しながら、声をかけると、キラキラ笑顔。
「据え膳くわぬは、女の恥」
それを言うなら、男の恥。あなた、女の子でしょ。
ナミちゃんに、食べられてしまわないように、身を起こす。
「何も、お返事していないのだけど?」
「大丈夫よっ。SEX1回で分かる事は、さらにたくさんあるって。ね?」
ウィンク、ひとつ。
上手に切り返されてしまった。
1本とられたわね。
だけど、ごめんなさい。
まだ、それはちょっと。
とりあえず、明日二人で一緒にお茶でも飲みましょう。
最初は、そこから、ね。
なんて、かわいく言ってみたら
「突然キスしてくる人が、なーにをカワイイコトを」
とか言われたり。
いいじゃない。突然はお互いさま。
私は、カワイイコト好き。
それから、カワイイ子も好きよ。