ユキヒト×アキラ

□Changing room for the season
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ユキヒトとトシマを抜け出して、それから適当な場所に部屋を借りて一緒に住んで、もう少しで季節が変わろうとしていた。
窓の外は昼だというのに薄暗く、今にも雪が降るのではないかという気温。
そろそろ部屋を衣替えしないと…。

アキラはベッドに腰掛けながら部屋を見渡した。
ベッドのシーツも少し暖かいものにしたいし、床にもカーペットを敷きたい。暖房器具なんかも買い揃えないと。
この部屋に来て初めての冬がくる。
以前アキラが住んでいた場所は、そんなに雪が降り積もることもなく少し寒さを我慢すれば一人なんとか暮らしていけた。
ユキヒトと一緒に暮らしているこの地域はどうなんだろう。
近所の人に聞いてみたが、そこに住み慣れた人間には環境の変化にとまどうアキラたちの悩みなど塵にも満たない小さな笑種なのだ。
冬がくる。ただそれに向けて準備すればいいだけのこと。
一人だけなら適当に寒さを凌げる備えをして終わっていただろう。
それが二人となると、結構気を遣うものだった。

ユキヒトは寒がりなんだろうか?
逆に自分のほうが寒がりでユキヒトが暑がったら?
ベッドは一緒に使っているから俺一人でシーツを暖かい物に変えたら怒るだろうか?
仕事から帰ってきて床が冷たい…なんてことが嫌だからカーペットを敷こうと思ったけど、ユキヒトは床の方が好きかもしれないし。


ふと床を見渡すと、そこかしこにユキヒトの描いた絵が散らばっていて足の踏み場の無い状態だった。

この絵だって片付けていいのか悪いのか…。

ユキヒトは自分の描いた絵に関心がない。
一度ペンを滑らしてしまえば、紙に描かれたそれを廃棄されたもののように床に放り投げる。
何のために絵を描いているのか・・・。確か前に一度聞いたことがあった。
「ただなんとなく。描いてると落ち着く」そう言って、それ以上絵について語ることは無かった。

ただなんとなくの絵を、ゴミ箱に入れずに床に放置しておく意味がわからない。
飾るわけでも、上手くいったとアキラに見せるわけでもない。
どんどん溜まる絵にアキラは少し困っていた。
処分…なんて言葉は使いたくないが、積もり続ける紙の量にうんざりした事があった。
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