Present

□『虹』
1ページ/11ページ


投げ付けられたのはひどく簡潔で。
極々、端的に。
直接引っ叩かれたような衝撃でもって響いた。



「バカ!」




―あれから数日経った現在。
今だなお膠着状態は続いている。

同じ大学のキャンパスに通っていて。
取る講義が被ることもあるのに。
言葉を交わす事はおろか、目を合わせることもない。

意地になってるんだってことくらい、俺だってわかってる。
こうして常にあいつの挙動を目で追っている自分に呆れてるさ。

あいつだってそう。
目を合わせていないのに、ふと視線を感じれば。
ほぼ確実。
視線の先にはあいつがいるんだから。


あいつが意地っぱりなのも、高校生の頃からわかってるんだ。

でもさ。

あいつだってそうだろ?
俺が意地っぱりだって十分過ぎるくらいわかってるはずなんだ。

どこかで折れなきゃいけない。
痛いほどわかってるって!

あいつのほうから「ごめんね?」なんて言って来る頃合はとうに過ぎた。
ほんとにそろそろなんとかしないといけない。

だけどさ!

正直俺はなんであいつがああも怒ったのか…
さっぱり解らないんだよ!

…謝りようがないじゃん。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ