Short story*

□やさしい空気
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「クリスくんはやさしいね。」

キミが微笑んでそう言うたから。

「ありがと♪」

ボク、ちょっと困ってもて。
ビミョーに笑ろて返事するんよ。



―ねぇ?やさしさってなんやと思う?




ボクな、辞書で調べてみてん。

「やさしい・優しい」
(1)穏やかで好ましい。おとなしくて好感がもてる。
(2)思いやりがあって親切だ。心が温かい。

国語辞典にはそう書いてあってん。

んでな?

「やさしい・優しい」
《柔和》gentle; sweet; tender; 《親切》kind(hearted).
・優しく gently; tenderly; kindly.
・優しくする be kind [good, nice] ((to a person)).
・優しさ tenderness; gentleness.

和英辞典にはそう書いてあってん。


でもなー?

なんかちゃうねん。
キミからこぼれる「やさしい」て、もっとな…


ほわほわでキラキラであったかい。


それはやっぱりgentlenessとはちゃうねん。


うん。ゴメン。
ようわからんこと言うてるなぁ。ボク。




『たとえば…クリスくんはいつもわたしを笑顔にしてくれるよ?』
『それに、いつも気遣ってくれるし。それはやっぱりやさしいんじゃないのかな?』


ボクがキミを笑わせるんは、キミの笑顔をボクが見たいからやねんで?
キミを気遣うのはそうしたほうがボクが気持ちええからやねん。


―それはキミのためやのうて、ボクのためや。


キミにいっぱい「やさしく」したい。
いっぱい「やさしい」をあげたい。

せやけどボクにはそれがわからへん。

ゴメンな?




『うーん。やさしいって難しいのかな?』


ううん。それはちゃうと、思う。

キミはやっぱり「やさしい」。
ボクはキミからいっぱいもろとる。


ほわほわでキラキラであったかいもん。



…少しだけ、わかってきたかもしれへん。



でもな、ボクにはそれがあらへんのや。

だって。

ボクがキミにあげようとすると、やっぱりそれは壊れてしまうんよ。
ボクはボク自身をキミに良く思って欲しくてそれを渡してる気がするん。
ボクが欲しいものをキミからもろてるだけやねん。


そんなんはちゃうんよ。


『でもさ、クリスくん。それはクリスくんがそう思ってるのかもしれないけど』
『わたしはちゃんともらってるよ?』


ほんまに?
ほんまにそうなんやろか。


『きっと、相手がいて初めて「やさしい」ってことになるんだよ』


ああ。
そっか。
ボクの中にあるもんやのうて、ボクとキミとの間にあるもんなんかな?


そんならボクが持ってへんくてもええんかな?





―キミからもろて、ボクから渡して。

そうやって出来上がるのんが「やさしさ」なんやったら。

それはとってもほわほわでキラキラであったかいもんになるんかな?



キミが笑ろてくれたから。
やっぱりボクもお返しせなあかんね。


「ありがとう」


―どやろ?今ここに「やさしさ」はあるんかな?

あったらええなぁ〜……。




end.

→NEXT.あとがきっぽいもの。

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