Short story*

□『輝石』
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はじめての出会いから。
どれくらい経ったのかな?

幼い頃の、あの夕焼けに染まる海辺での出会いから数えたら。
もうずっとずっと前からだね。

それから何年も空白があって。

成長したわたしは、やっぱり大きく成長したあなたにもう一度出会えた。


あの日。あの時。
『奇跡』のような出会いと再会を果たせたこと。
それ自体がすでに神様からの贈り物だったんだって思うよ。


それからたくさんの数え切れないほどの思い出を二人で作って。

いっぱいケンカもして。
いっぱい笑って。

そして…いっぱい泣いた。


再会してから3年目のあの出来事は、今でも忘れることができないけど。


どうしてもっと早く、あなたの苦しみに気付いてあげることができなかったんだろう。
わたしはやっぱりあなたの言う通りボンヤリで。

朝焼けの冬の海で漂いながら見えたあなたの瞳に、切ないくらいのやさしさと、苦しみが。
あんなにはっきりと現れていたのに。




それでもまた、再び成長したあなたが迎えに来てくれたよね?
あの灯台で。
それもわたしにとって神様からの贈り物。

ううん、違うね。
あなたからの大切な贈り物。


いつでもわたしを見てくれて、この手を引いて。
それからはずっと一緒に歩いてきた。

どんな日だって二人でいれば大丈夫。
そう、思えるんだよ。
あなたのお陰でわたしも少しは強くなれたのかな?



今日はそんな大切なあなたが。
この世界に生まれた奇跡の記念日。

今までだって何度も一緒にお祝いしてきたけれど。
今年は特別なんだ。

どうしてかわからないけれど。
女のカンって結構、侮れないんだよ?


わたしも、あの日の後悔を。
涙を。
思い出に変えようと思う。


弱かった自分への決別と。
この先もあなたの隣で歩む為の決意。


わたしからの気持ちは、この琥珀に閉じ込めて。
あなたに渡そうと思う。
あの日のあなたの瞳へ。



「瑛くん。お誕生日おめでとう!25年前のこの日に、生まれてきてくれてありがとう。」


『ありがとう』

ほら。やっぱりあなたは綺麗でかわいい人。
そんな事を言ったらまた照れて怒っちゃうかな?



これからもずっと。
あなたの隣で歩いて行きたい。
一緒にいれば、きっとこの先の未来も。
なにも恐くない。
繋いだこの手を離さない。



ただ『ありがとう』じゃ伝えきれないから。

ありったけの想いを込めて笑うね?

きっと、伝わるよね。


「…幸せです。」


これからも、最後の1秒まで。

そばにいてね?

――わたしの『愛しい人』





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