BLACK

□サヨナラ
3ページ/29ページ


今から10年も前…



そう、あれはシングルス準決勝、決勝戦の前日。


確か俺達は、お前を抜かした3年全員でハンバーガーを食いに行ったんだ。


「なぁ、皆でマック行こーぜ!
明日の試合の前祝いだっ」


言い出しっぺは向日岳人。


《前祝い》ってやつらしい。


何で祝い事なのにファーストフードを食わされなきゃいけないんだよ!?

つか、お前らが食いたいだけだろΣ



これが俺の本音だったけど


「主役は拒否権なし!」

「たまには付き合えよ」


ジローと向日のガキが俺の腕を掴んで離そうとしないので、俺は諦めてそいつらに付いて行くことにした。


だが……


「ったく…。
あ、おい忍足。テメェは行かねぇのか?」


「んー?俺は行かへんよ?
今日、用事あんねん」


俺様がせっかく参加するのに
こいつは行かないと言い出した。


いつも通り冷めたツラで
バイバイ、と手を振りながら
俺達と反対方向へ歩く忍足。



俺様が、せっかく気をきかせてやってんのに…。


この態度は正直ムカついた。


だけど――――


「じゃぁ、次は一緒行こうね」


「せやな、また誘うて。
ぁ、景ちゃん、景ちゃん」


「何だよ…ってかお前、《ちゃん》付けで呼ぶなって何度言えば分かんだ?ヤ」


「明日皆で応援行くさかい。
頑張るんやで!」


「シカトかよ…(怒)
つか応援なんざなくても
優勝は俺様のもんだ」


「あはは、よう言うわ。
でも、跡部はそうじゃなくちゃな。ほなまた明日!」


「あぁ、じゃあな」


「おしたりー!約束だよー!」

「侑士、またなっ」


「はいはい」




まぁ……

コイツとなら
いつでも行けるか。


俺は、そんなことを思って
忍足を見送った。




でも今考えてみると
全部 嘘ばっかだったな。



《次》、《一緒》、
《いつでも》、《また明日》



1分もかかっていない会話に

こんなにも


嘘が混ざってるなんて…。



まぁ、最初は、全部が全部…
本当だったんだけどよ。



また遊びに行くことも


一緒に居ることも…


いつでも…、

それこそ、いつまでも


忍足と話すことが
出来るんだって思ってた。




明日会うことだって



当たり前。


それが普通。日常だと、俺達は思い込んでいた。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ