feel keenly

□白の花びら
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目を細めた。


(…―――白)


カサリ、手にした花束を揺らす。
一枚、白の花びらが砂利の上に落ちた。

瞼を伏せた横顔。目を惹く純白。まるでそこだけが一つの縁取られた絵のように。
一つ一つがゆっくりと息づき、魅了する。


「お、」


緩慢に。
さらり、その白銀を揺らして淡紫の瞳を覗かせる。
流し目で、艶やかに微笑んだ表情を私に向けて。
ふわり、その白銀が風に揺らめいた。


「ここの子?」


薄く開かれた唇から、言の葉。
ゆっくりと空気を伝い、私の鼓膜に届く。
甘やかな声に、震えた。

こくり、頷くしか出来ない。
淡い紫の瞳が、私を捉えている。
花束を持つ手が、震えた。

くすり、瞳を細めて一笑。
柔らかな色が艶かましさを包む。
動作一つ一つが脳裏に刻まれていく。


「ちょっと興味あってさ。あ、こういう場所ってなんか誰かに声掛けなきゃダメ?」


二度ほど瞬き、首を横に振る。


「そっか、よかったー。…さぁて、そろそろ帰んなきゃねぇ」


綺麗なオレンジに染まった空を見上げて、独り言の様に言葉を紡ぐ。
するり、組んでいた腕を解き、片方の手をズボンのポケットに入れた。
一つの映画でも見ているかのように。目で追い、見惚れた。







…―――カサリ

ノートの上に白い花びらが一枚落ちた。
花瓶に差した花たばを一瞥、ギィと音を鳴らして椅子のもたれに背中を預け、長い間ここにある萎れかけた花弁を見つめる。

あの日の彼と同じ色。
艶やかに色香を放つ純白。



もう会えないであろう人に、私は心奪われたんだ。




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