その時歴史は歪んだ
□遠い想いと近い夢
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吹きすさぶ風が、転がっている旗をなびかせ、転がっている死体の臭いを運び戦の終わりを告げる。
戦場を見渡せばこんなに広かったのかと、今では虚しく視界の拓けた大地。
そこから少し離れた森。
戦火に晒されてもなお、地にしっかりと根をはった太い大きな木。
その下に佇むと、ちっぽけな人間が戦などと、何をしているのかと思う。
そんなちっぽけな人間が、決意を決めた。
「おい」
突然の呼び掛けに驚いて振り返った。
スラッとした背丈に茶色い綺麗な髪をなびかせ、冷ややかな目付きでこちらを見ている青年。
「み、三成…」
「何をしている、戦は終わった。退くぞ」
思わぬ登場に焦ったのは、ギン千代。
三成に声をかけられ驚いたようだ。
相変わらず三成は冷ややかな眼でギン千代を見ていたが、一定の距離が詰まると向きを変えて歩き出した。
「三成」
ギン千代の声が背中にかけられた。
黙って振り向くが、声をかけた本人は後ろでもじもじ動いている。
「あの…その…」
「用がないなら俺は行く」
そんなあっさりと、と思うギン千代。
思わず走りだし、三成の陣羽織をつかんだ。
背に刻まれた大一大万大吉が歪む。
「何をする」
「い、いいから話を聞けっ」
「それが面倒だと言っているのだ」
三成が睨み付けたギン千代は、いつもの立花節などみられない。
強い女武士と言うより、か弱い女のような顔つきだった。
そんな顔は初めて見たものだから、言い過ぎたか、と思って取り繕うように咳払いをした。
「すまない」