椿の華

□第二訓
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出逢い、仲間になる

それは時間もかかるものではなかった───






第二訓
真剣って簡単になるもんじゃねェ




『ただいまー!!
みんなにお知らせだー!』


近藤はかけ声と共に道場の中へと入っていった。
すぐに駆け寄って来たのは幼く10ぐらいの少年。何事だと思い、近藤の近くに寄ってきて話かけた。


『…近藤さん』

『どうしたぁ?総悟』


近藤は未だに笑顔が絶えない。総悟と呼ばれた少年の不思議そうな顔をされてもだ。


『その子…だれ?』


少年は近藤の手を握っている椿を指差した。椿は不安そうにギュッと先程よりも強く手を握りしめた。


『この子は拾ってきた子だ!!』

『誘拐?』


汗を拭き取りながら少年は言った。平然と誘拐という、単語を告げた。
近藤は一瞬、もしかして自分のやった行為は誘拐なのか…?と考えたが頭を振った。


『この子には家がないんだ…』

『花咲 椿。悪いな、家がなくて…近藤さんには甘えてしまったが…いないほうがいいか?』

『おれ、沖田 総悟。おれは別にここにいても構わない』


少年は笑顔で言った。その笑顔は張り付けの笑顔ではなく本物だった。


『本当か?ありがとう…』


お互いに目を合わせ、微笑み合う。椿と総悟は打ち解けていった。


『良かったな、椿!』

『うん!』

『…そういや…トシは?』


椿から目を離すと近藤は周りを見渡してから、総悟に訊いた。


『…知らないよ』


そっぽを向きながら答えた。それはムスッとした顔をしながら。
近藤はそうか、と言って済ます。
そう言ったすぐにひょこっと誰かの顔が現れた。


『呼んだか?』

『おお、トシ!!ちょっとな』


男は近藤に歩み寄った。
椿を見つけ、奇怪そんな顔をしながら。


『この子なんだが…』


近藤は椿を前にだした。おずおずと椿は男の目をみた。


『ガキがどうした』

『ここに居てもいいか…?』


暫し、男が黙る。
男は少年と違く、じっくり考えている。近藤と椿は男を心配そうに見ている。


『…近藤さんがいいなら、別に構わねェよ……』


照れているのか、視線をはずしながら言った。


『花咲 椿だ、うざかったら、追い払ったりしても構わん…迷惑はかけんようにする』


まだ10にもなっていない子供が大人っぷりの言葉を言った。


『ガキがよく言うな…』

『ガキガキそこまで言うな。名は?』

『…土方 十四郎』


男はそれだけ言い、再び竹刀を握った。
それを見た椿はそれほどに大切なものがあり、強くなりたいのだろうと何となく感じた。
私と同じだ、頬が自然と緩んだ。


『近藤さん、私、強くなりますかね?』


椿は再び、近藤を見て問いかけた。


『なるさ、剣術も、心も』






やっと見つけた、自分の居場所


信じられる仲間も出来た

仲間がいなかったら、
今の自分もいない



感謝しきれないほど


みんなといると笑顔が増えた
もう、恐すぎるほど幸せだった



そして、時は流れた───

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