∈犬の兄貴コーナー∋
□SOMEDAY 8
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どのくらい経っただろうか―――
白雪は、誰かに したたかに踏みつけられて目を開けた。
「ぐえ・・ッ!だ、誰だよぅ・・もぉ!」
「あっ、スミマセ・・って?!白雪お姉ちゃんッ!!」
「ふぇ?」
何やら とてつもなく大きなリュックをからい、井戸から出てきた女に、イキナリ踏みつけられた上、
名前まで呼ばれ 白雪は重い瞼をしばたかせて、手をかざす。
「あらぁ・・?アンタ、『かごめ』じゃん?!」
「しっ、白雪お姉ちゃ〜〜ん!!うわあぁ―――んッ!」
「えっ?!えっ?!」
今度は、イキナリしがみついて泣きじゃくるかごめに、白雪は目を白黒させた。
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気を取り直したかごめに案内され、白雪は犬夜叉一行の元へと向かっていた。
「お姉ちゃん・・伯父さんと伯母さんが、気が狂いそうに心配してたよ。あ、それと・・発作が出てるん
じゃないかって?」
「発作?!あ、そー言えば、ココに来てから全然出てないや!」
白雪は、様々なアレルギーを抱えた体質をしており 普段の生活の上でも、食べ物は勿論の事、着る物や、
触れる物まで規制がある中、暮らしている。毎日、数種の薬を飲み ひどい時は、呼吸困難になる発作まで
起こしていた。
その彼女が、ここ戦国時代へ来てからというもの 症状が出る事は、一度もなかったのである。
「ホント?!良かったぁー!それにしても、あの怪我でよくここまで――」
「あのさ・・――」
白雪は、かごめの言葉を遮る様に口を開くと、表情を曇らせた。
「パパとママは・・元気にしてるのか・・な?」
「あ・・うん!元気だよ。それとね・・――」
かごめが言いかけた時、向こうの方から小さい茶色い物体が、転がって来るのが見えた。
「おぅ〜〜い!かごめぇ〜〜〜ッ!」
勢いよく かごめに飛びついた子狐を見て、白雪は思わずザザッと後ずさり大声で叫んだ。
「かっ、かごめっ!!その動物!あっちにやって!クシャミが止まらなくなるから・・ックシュン!!ハ・・ハ、ハクションッ!!」
言ってる傍から、派手なクシャミを始めた白雪を見たかごめは、慌てて七宝に声をかけた。
「七宝ちゃん、ゴメン!白雪お姉ちゃん、『動物アレルギー』で 動物の近くに居るとクシャミが
止まらなくなるの!少し離れてくれる?!」
「じゃ、コイツが白雪なのか?!」
「だぁ〜れぇ〜がぁ〜『コイツ』じゃあぁぁッ!!サッサと向こうに行かんかいッ!」
その美しい容姿とは、全く逆の言葉使いに 腰を抜かした七宝は、ヒィーッと叫びながら走り去ってゆく。
隣では、かごめが 顔を引きつらせていた。
「しっ、白雪お姉ちゃん?随分と、この時代に順応しているみたいね;」
「まぁね。」
白雪は、殺生丸の元を黙って去ってきた事を思い返しながら、澄んだ高い空を見上げた。
そして、ふと考え込む。
あの『巨大犬』である殺生丸と一緒に居た時、自分は今の様に クシャミを連発したか・・? と。