小説 参
□朧月夜に舞う蝶は 6
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「ぁ‥1つ、言い忘れてたわ。大事なお客様が、今夜、アナタを指名して来るわ。そそうのない様にね。」
「ハッ。」
後ろ手に戸を掴んだ格好で 背を向けたまま言うと、残った10センチほどをパタリと閉め、サラは
静かな足音と共に、気配を消した。
「私に‥お客様‥‥?」
ゆっくりと立ち上がったナギサは、この部屋唯一の小さな格子窓を覗いて見る。
小さな四角の窓から見た空は、丁度満月が東の方角へ顔を出した処だったが
その美しい姿は見せぬ、とでも言う様に 薄雲がそれを覆い、朧に霞んでいた。
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「今夜は満月‥‥どうりで身体が火照るハズ‥。」
「なら、俺が慰めましょうか?」
込み上げる欲望に、ブルリと震える身体を自分でギュッと抱き締めたサラの背後から声がし
彼女は肩で息を吐いてから、ゆっくりと振り返った。
「余計なお世話よ、シカマル。」
「お久し振りです、サラ先生。直接お会いするのは あの日以来‥5年振りですね。」
「お互い、命あって再会出来て…本当に良かったわ。」
心から微笑むサラを、少し眩しそうに目を細めた 上忍のシカマルが、見つめる。
「彼女なら、屋根裏部屋よ。」