小説 参

□朧月夜に舞う蝶は 5
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この色街一の老舗廓、それが創業200年を誇る『夢屋』なのでございます。

お客様の期待を裏切らない 行き届いたサービスと、満足いく御もてなし。



そして 何より、どの廓にも負ける事のない ダントツの遊女レベル。



子供の火遊び程度の金額では、まずもって遊女の顔を見るどころか、話すらさせてもらえない

敷居の高さは、そのまま廓のステイタスの高さとして 評価されてるのでございます。



そんな夢屋の一室で、何やら女性が2人 密事を話している御姿が見えます―――



「いつまでこんなトコで燻ってる気?いい加減このままじゃ、本当にダメになるよ?! 今なら
今ならまだ間に合うんだから、ちゃんと誤解解いて 帰ってきなって!」


「その時は‥その時よ。今が正念場なの。確かに心配事はたくさんある。だけど…もう少しで掴めそうなのよ。
それに‥彼も‥別の人との方が‥――」


「――サラッ!‥‥分ったわよ。でも、また来るから。」



『また来るから』と言った瞬間、その声の主の姿はスイと消え、夕焼けに照らされた部屋の中

1人残された女性は、ゆっくりと肩で息を吐くと 開いた両方の手のひらを、ジッと見つめた。



「‥‥まだ‥そのクセ‥直ってないんだな。」



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