小説 参
□朧月夜に舞う蝶は 3
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驚愕した彼女の表情に ただならぬモノを感じ取った俺は、ナギサの手を取り 駆け出した。
チラと肩越しに振り返ると、かなり後方に いつか見た屈強そうなムキムキマンが数名、追いかけているのが
見えたが、人の波をうまくかいくぐれず 此方を見失うのも時間の問題に見えた。
「よしッ‥このまま逃げ切るぞ!」
初めて触れたナギサの手を、再度確認する様に強く握り 俺は、全力で走った。
何処を目指して――と いう訳ではなかったが、気が付けば、彼女と空を見上げてた『あの場所』へと来ていた。
「ハァ‥何とか‥逃げ切ったみてぇ‥だな。」
「どうして‥私を‥?」
戸惑うナギサに、視線で『座れ』と促したシカマルだったが、荒い呼吸を繰り返し ドッカとベンチへ
座り込む彼とは対照的に、ナギサの方は あれだけ走ったというのに、もう息が整っていた。
「どうしてって‥そりゃ‥目の前で人が死のうとしてりゃ、止めるだろーがよ‥フツーさ‥ハァ‥。」
「そんな事‥初めて言われた‥。」
「ぇ‥‥?!」
ポツリと漏らしたナギサの言葉に、シカマルが顔を上げると ソコには、今にも泣きそうな顔で微笑む
ナギサの姿があり、シカマルの胸は、何故かざわめいた。