小説 弐

□はかない月明かりの下で 18
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「アレじゃないか?」


カカシが指さすと、ヤブも『あぁ』と頷いたが その鳥は、どう見ても こちら目がけて飛んで来てる様で、
2人は顔を見合わせてから また、近付いてくる鳥へと視線を向けた。



「何だか、随分とノンビリ飛んでる鳥だなぁ・・・。」

ヤブの呟きに、カカシも立ち上がって眺める。


「や、ノンビリと言うより 優雅・・って言うか・・。」



その美しい鳥は、間違いなく2人の居る方へと飛んで来てるのだが 急ぐでもなく、かと言って 
疲れてる訳でもなく、飛ぶ事を『味わう』かの様に ゆっくりと、時に旋回しながら 少しずつ、少しずつ
近付いて来る。


ヤブとカカシは、何故かその様子から目が離せず 残り少なくなったオレンジの夕陽の光に
目を細めながらも、ただ見つめた。



すると、夕陽が完全に姿を隠し終えるのを待つ様にして その鳥は、カカシの左肩へ、フワリと止まった。
その鳥が止まって数秒後、カカシは突然 全速力で駆け出し、その様子にヤブが慌てて声を掛ける。


「オィっ!カカシ!どーしたんだよッ!何処へ行く・・――」



ヤブの言葉が言い終わらない内に、カカシの姿は小さなつむじ風と共に消えてしまった。

「な・・何なんだよ・・・一体?」



いつの間にか どっぷりと暮れた星空の下、ヤブは唖然として立ち尽くす。
東の空には、美しく細長い三日月が 丁度姿を現したところだった。



―――今夜 月が見える丘で



あのヘンテコな美しい鳥は、俺の肩に止まると 日々渇望していた『あの声』で確かにそう囁いた・・・ッ!


マックス・スピードで駆け抜けながらカカシは、気を抜けば 身体から飛び出してしまいそうな程高鳴る心臓を、
押さえる様にして ひたすら走った。
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