小説 壱

□はかない月明かりの下で 3
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「サラ、あまり子供達をイジメルでないぞ。」


三代目の部屋の前の廊下の窓から、火影は外の木に向かい声をかけた。
窓の向こうには、樹齢千年と云われている立派な桜の木があり その木の枝にゴロリと横になったサラの姿があった。


「私は・・・指導には向きません。ヤブに任せますので、私を諜報の任務に戻して下さい。」


諜報・・。やっぱりサラは・・・月隠れは、そんな事をしていたのか・・・。

火影の後を追う様に来たカカシは、足を止め気配を消すと物影にひそみ息を殺して二人の様子を伺った。


「サラ、お前はどうしてそんなに里を出たがるんじゃ。」

「・・・・出たい という訳ではありません。ですが、三代目から・・・里の人からも『疎まれる』身の上。
できるだけ離れて・・・・と、思いまして。」


「私が・・・・うとむ・・・・?」

火影は驚いて目を見開いた。

「どういう意味じゃ?!私はお前を大切な―――」

「ムリなさらなくてもいいんですよ・・・・私は、いつの時も聞こえていたんですから・・・・。」

二人の間の不穏な空気を入れ替える様に、さわやかな秋風が通り過ぎてゆく。
しかし、重苦しいそれは変わる事はなかった。



「私を産んで、母は死んだ。月隠れは、その宿命の一つとして寿命が短い。『たまたま産後が寿命だったんだ。』
と、父は言っていたけど 私には火影様の声が聞こえた・・・。」

【お産がよくなかった。この子を産まなければ、優秀な月隠れをこんなに早く失う事はなかったろうに。】と。

「優しかった父も、母の後を追う様に亡くなり 次に私をとても愛してくれたのは、母の義弟であった
四代目火影様・・・だった。」


ところが、あの13年前―――

九尾の妖狐が現われた時、四代目は私たち月隠れを守る為 そして里を守る為、自らが犠牲になって亡くなってしまった。
その時も三代目は・・・四代目の亡骸にしがみついて・・・・

【何故、お前が死なねばならん!サラは私の大切な者ばかり奪ってゆく】と・・・。

「そう心は・・・・叫んでありました。」
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