小説 参

□朧月夜に舞う蝶は 3
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「お前‥いつ木の葉に?」

「今朝早く‥父と母が死んで‥そしたらすぐ木の葉の使者って人が、私を連れ戻しに来て‥。」

「な‥ッ‥2人とも亡くなったのか?!」


驚き目を見開くシカマルに、ナギサは黙って頷く。 そうしてから、思い出した様に空を振り仰いだ彼女は
胸一杯に空気を吸い込んでから、ようやくホッとした様に肩を下ろした。


「そりゃ‥大変だったろーけど、何でまた死のうなんて?それに、追っかけてたのは同じ木の葉の忍だろ?
何で同胞が、お前を追っかけてるんだ?‥って、質問ばっかしてんな、俺。」



フッと我に返ったシカマルは、頭をポリポリ掻きながら バツが悪そうに微笑む。

ナギサが里を出たのは、もう5年も前の事。今はシカマルは13、ナギサは14歳。


よく見れば、ほんのり女の色香を身にまといながらも 本人は、その事を全く気付いてない風に見える。



「父と母のお墓どころか、遺体さえも放ったまま連れ戻されて、明日から‥色街の廓で働いてもらうって
‥そう言われて‥。」


そうか‥―― と言いかけて、何かにハッとしたシカマルは 素早く印を組み、口の中でブツブツと唱えると


喋るな と言う風に、ナギサの唇へ人差し指を当てた。それから、煙玉を派手に3つ投げると 
再び彼女の手を取り走り出す。



走りながら、シカマルは考えた。



よく解んねぇーケド‥コレは、きっと『アノ人』に聞いてもらった方が 良いと思う―――



シカマル達が逃げた後、煙の向こう側から 激しく咳き込む2人の『いかつい男』が現れた。

「クソッ!あのガキ!もう少しって処で逃げやがってッ!」


「仕方ない。ガキとは言え、この間の試験で たった1人、中忍になったシカマルが一緒じゃ そう簡単には
いかないだろ。教祖様に、次の作戦を伺おう。」


チッと舌打ちした2人は、音もなくスイと消える。

後には 何もなかった様に、爽やかな風が吹きぬけるだけ―― だった。



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