小説 壱
□はかない月明かりの下で 3
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「サラッ?!」
「ゴメン、何か・・・苦しく・・て・・。」
「ゴメンよ。ケガ人の君に こんな話して。もしかしたら、君も26歳だし、その・・・知ってるかと思って。
ゴメン、配慮が足りなかったな 俺・・・。」
イルカはそう言うと、サラに横になる様 促した。
「いいの、大丈夫。そこまで子供じゃないど・・・それ、本当なの?」
サラは、羽毛枕に顔を埋めたまま尋ねた。
今の自分の顔は、誰にも見られたくなかった。
「あぁ、本当だ。彼女が、キリエが唯一サラに話してなかった事だって言ってたから。キリエも話には聞いていたけど
自分が体験してない事だったから言わなかったって、言ってた・・・・。」
イルカは、知ってるんだ・・・キリエは本当にイルカを好きだったんだ・・・。
「・・・キリエの髪の色は・・・?」
「赤褐色。」
「目の色は?」
「緑・・・だ・・・。」
間違いない、イルカは 本当のキリエの姿を見ている。
苦しい・・・・心臓が・・・口から飛び出しそうだ・・・。
サラは、ギュッ とシーツを掴んだ。
「傷、痛むのか?」
「ううん・・・ゴメン。少し疲れたみたい。」
―――サラ・・・?!―――
少し涙声になっていたサラに驚くと、イルカはそっとサラの髪を撫でてから 黙って病室を出て行った。