小説 壱

□はかない月明かりの下で 3
8ページ/9ページ

「サラッ?!」

「ゴメン、何か・・・苦しく・・て・・。」

「ゴメンよ。ケガ人の君に こんな話して。もしかしたら、君も26歳だし、その・・・知ってるかと思って。
ゴメン、配慮が足りなかったな 俺・・・。」


イルカはそう言うと、サラに横になる様 促した。


「いいの、大丈夫。そこまで子供じゃないど・・・それ、本当なの?」

サラは、羽毛枕に顔を埋めたまま尋ねた。
今の自分の顔は、誰にも見られたくなかった。


「あぁ、本当だ。彼女が、キリエが唯一サラに話してなかった事だって言ってたから。キリエも話には聞いていたけど
自分が体験してない事だったから言わなかったって、言ってた・・・・。」


イルカは、知ってるんだ・・・キリエは本当にイルカを好きだったんだ・・・。


「・・・キリエの髪の色は・・・?」

「赤褐色。」

「目の色は?」

「緑・・・だ・・・。」


間違いない、イルカは 本当のキリエの姿を見ている。
苦しい・・・・心臓が・・・口から飛び出しそうだ・・・。
サラは、ギュッ とシーツを掴んだ。


「傷、痛むのか?」

「ううん・・・ゴメン。少し疲れたみたい。」


―――サラ・・・?!―――


少し涙声になっていたサラに驚くと、イルカはそっとサラの髪を撫でてから 黙って病室を出て行った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ