小説 壱
□はかない月明かりの下で 3
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『だけど、きっとサラが助けてくれている事でしょう。 イルカ・・・愚かで無力だった私を許して下さい・・。
そして、とても勝手なお願いですが 子供を・・・クジラをどうか、どうかお願いします。そして、サラ―――』
サラの体が、ビクンと跳ね ゆっくりとキリエの顔を仰いだ。
光り輝くキリエは、まるで菩薩の様に尊かった。
『幸せになって。そして、幸せになる事を 怖がらないで・・。イルカ、サラに『あの事』を教えてあげて下さいね。
私はいつも二人と共にある。二人とも・・・・必ず幸せに・・・・―――』
そこまで言うと、キリエの姿は またサラサラと音をたて 砂の城が波にかき消される様に、少しづつ崩れながら
秋風に乗って窓の外へと運ばれて行く。
「キリエ―――――――――っ!!」
空へと伸ばした両手で バランスを崩したサラの体は、グラリと揺れ
そのままベットから落ちそうになったのを、あわててイルカが支えた。