小説 壱

□はかない月明かりの下で 3
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「私が居ると・・・こんな風に人を傷つけてしまう私は、人との関わりが下手なんです。
放っておいても、あと数年もすれば私は寿命で死にます。どうか、私を任務に戻して下さい 火影様。」

「ならぬ!そんな心を抱えて今まで生きてきたのなら尚の事、里から出す訳にはいかん!養生するのだ。」


三代目はそう言うと、フラつく足取りで執務室へと入って行った。


母も・・持っていた?!この聞こえてくる耳を。

一体、どんな気持ちで彼女は受け止めていたのだろう。
愛する人の『心の闇』を聞いた時、それでも笑顔でいられたのだろうか・・・・。


お前さえいなければ―――


そんな声、何千 何万の そんな声が容赦なく頭の中を駆け巡っても    それでも
いつもと変わらない自分で・・いられたのだろうか・・。

どうして月隠れ一族は短命で
私は 一人ぼっちなのだろう・・・・。



カカシは、さっきまで火影が立っていた窓に自分も立ってみた。

目の前にある桜の木の枝にはもう 彼女の姿はない。
ただ、ほんのりと香るギンモクセイの香りが
そこに居たサラが、分身ではなく本体であったという事を 彼に知らせてくれていた。


「サラ・・・・・。」

口に出して呟いた時、ふわりと横切る香りに カカシの心はギュッと締め付けられた。


―――だから カカシも 私を嫌っている―――


じゃあ・・・・サラは・・・・
彼女は『あの夜』の事を、俺が憎い女を陵辱した・・と・・・?!


「そんなっ!じゃ、何故・・・・・っ?!」


小さく叫んでみても、さわやかな秋風が 優しく頬を撫でるだけだった。
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