小説 壱

□はかない月明かりの下で 3
2ページ/9ページ

三代目は、言葉もなく真っ青な顔でサラを見つめた。
窓枠に掛けた両手は、遠目にもハッキリわかる程震えている。


三代目・・・? カカシは心の中で呟いた。


「そして その叔父様・・・四代目火影様が亡くなった時、里の人は今迄にない程の深い悲しみに包まれた。
特に叔父様の班にいた部下の子達・・・・二人はその戦いの中で幼い命を落とし、一人生き残った子は 
三代目と同じ様に私の事を憎んだ・・・・・。」

【月隠れを守ったりしなければ、先生も仲間も死なずに済んだのに・・・。】と。


「だからきっと彼も・・・カカシも私を・・・嫌っている。」


サ・・・ラ・・・・?!

カカシは愕然とした。
そして、彼の脳裏には『あの日』のサラの姿が走馬灯の様に浮かんでくる。
その中で、一つだけ ひっかかっていた あの言葉。

『カカシ・・・・・もう・・・・・許して・・・。』

あれは・・・・そういう意味だったのか?
カカシは、軽い目眩を覚えると強く目を閉じた。



「サラ・・お前が聞いた声は、人が誰しも持つ『心の闇』の部分であり、それが人の心の『全て』ではないんじゃ。
そうか・・・・お前も母と同じく、読心術・・それも『暗心』を読む事が身についておるのじゃな・・。」

三代目は疲れた様に 深いため息をついた。


「サラ、よくお聞き。人間は、心が高ぶったり逆に沈み込んだりした時 普段全く考えない事や、
ほんの少し思ってるだけの気持ちがコントロールできず 感情の『タガ』が外れて、吐露してしまう事がある。

それは、決して本心ではないが 心の奥底にある皆が持っている・・・できれば見たくない自分の姿であったりもする。
お前の聞こえた声はそういうたぐいの声じゃ。ワシが一瞬でもお前を疎む様な事を思っただなて・・・。」


三代目は、目頭を押さえ うつ向いた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ