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□007銀河鉄道の夜
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帰り道、
乗ってきた自転車を手で引き、保育園からすぐ近くの家へ向かう。
本当だったら5分くらいで着くのだが、通常ルートでは階段があり保育園児には危険な上、自転車もあるため少し遠回りをする。
「煌太、今日は少し早いし、寄り道してこうか?」
「寄り道〜?どこ行くの〜」
「着いてからのお楽しみだよ」歩き出すとすぐに父親である遊羅が口を開いた。
まだ少年らしさの残ったその顔は父親と呼ぶには若すぎるようで、煌太の入園当初はよく他の母親たちに後ろ指を指されていた。でも遊羅は煌太が生まれた時から決めていたのだ。
何があろうと、自分の手でその子を育てるのだと。
たとえ友人、家族を失おうが夢を諦めることになろうが、愛する人の子を守りぬくのだ、と。
幸い両親や母子家庭であった彼女の母親は17で父親になった遊羅を助けてくれた。愛する人を失い、学校も辞めさせられた彼があまりに痛々しく見えたからかもしれない。
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