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□005タイムリミット1-始まりはいつも突然に-
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拝啓、上村七瀬様。
何の説明もなしにいきなり宇宙防衛隊に入ると言ってびっくりしたよね。
僕も何が起こっているかまだよく理解出来ていなくて、東京へ向かう夜行列車の中で一晩、君に何から話そうかを考えていました。
宇宙防衛隊のメンバーに選ばれた経緯を話すと面倒なことになるので、そこら辺はうちの母親に聞いてみてください。
あ、東京に着きそう。続きは飛行機内で書きます。
ひとまずこれを送るね。


PS、君のビンタ、今でもヒリヒリするよ、
松山智輝



君の顔が忘れられないとは書けなくて、本当に何の内容もない手紙になってしまった。
メールもあるこの時代になぜ手紙なのか、それは僕らが田舎の中学生で、そんなもの持っていなかったからだ。遠くへ行く僕は母親に昨日携帯電話を契約してもらったが、彼女は持っていない。
手紙など書くのは初めてだけど、この手紙が彼女に届き、返事が僕に届くころ、僕はもう島での研修が始まっているんだろうな。と思うとなんだか長く感じてしまう。
東京の駅のポストから僕らの町まで、僕の来た道を逆送するこの内容のない手紙のことが羨ましく思える僕は、やっぱりこれから行く場所には似合わない人物なんだろうな、と溜め息を溢すしかなかった。


東京から沖縄までの空の旅、それさえもが僕の初体験だった。
偶然窓側の席だった僕は、離陸してしばらくは窓から外を見ていた。だんだん街が見えなくなり、気付いた時には僕は青空の中にいた。


ー七瀬、僕はこのもっと上、宇宙に行くんだよ。


心の中で七瀬に話しかける。
そこで僕は彼女への手紙の続きを書き始めた。
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