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□007銀河鉄道の夜
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「銀河鉄道の夜」


夕方、秋空は澄みわたり、色づき始めた木々の葉は光に照されていた。そんな景色を見る暇もなく、アルバイトを終え、草上遊羅(クサガミ ユラ)は自転車を走らせる。
時間は午後5時半。
歩道では中学生が楽しそうに帰路を歩いている。
目的地に近づくにつれ、遊羅は自転車を減速し、降りると、ある門の中に入る。中からはたくさんの小さな子供たちが母親に手を引かれて出てきていた。
自転車を指定の場所に止め、遊羅は息子が待つ「かみざと保育園」の園舎に向かって歩き出した。



「あ、草上さん。今日はギリギリセーフ!ですね」陽気な若い先生がにこやかに言う。
「はい。」
遊羅も笑って返すが、猛スピードで来たせいで身体中から汗が吹き出している。中学時代サッカーをしていたおかげか、あまり息は上がっていなかったのだが。
「煌太くん、パパ今日は間に合ったよー。」
そんな遊羅のいつもの光景を気にする風もなく、先生は教室に向けて大声を上げた。
遊羅は先生と一緒に教室を見る。今日は帰りの時間に間に合ったため、まだ教室は活気が溢れていた。
すると、教室の奥から布製の手作り鞄をさげた男の子、草上煌太が駆けてくるのが見えた。
「パパ!」
少年はにっこり笑うと遊羅の足に飛び付いた。
「うふふ、煌太くんパパ早く来てくれて良かったねー。」
「うん!」
そんな少年を見て、遊羅は自然と笑顔になる。
「帰るか。」
「うん!せんせいさようならー」
「さようなら、煌太くんー!」
笑顔で息子に手を振る先生に遊羅は一礼し、息子の背中を押した。
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