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□003願い
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あなたとずっと一緒にいる。それが私の願いだった。だけど気付いてしまったの。この想いはあってはならないものだって。
ねぇ極夜、なんで私たちは双子に生まれて来てしまったんだろうね。



「白夜さん、こんな夜中に外で何してるんですか?」「・・・星を見てるの。」
3年前の今日、私は故郷を捨て、この里に来た。
故郷の組織で情報部だったこともあり、故郷の重要機密も知っていた。
どちらかと言えば戦いというものに消極的であった故郷に比べ、この里は戦いを好んでいるかのような体制で、当然私の持っている重要機密は喉から手が出るほど欲しいのだろう。
最初の1年こそスパイではないかと疑われたものの、故郷やその他の敵対国へのハッキング、情報錯綜などで次第に信用され、今ではそこそこの地位にいる、さっき話かけてきた彼は年齢こそ私より上ではあるが、私の部下だ。
「今更ホームシックってやつじゃないでしょうね?」「さあどうだろう。でも、今日は特別な日なの。」
夜空を見上げる。
無数の星々が連なり、まるで川のようだ。
あまりに綺麗で、自分を見失ってしまいそうだった。「・・・そういえば今日は・・・先輩が3年前にこの里へ来た日でしたっけ・・・?」
彼の短髪が夜風に揺れる。「・・・そんなこともあったっけ?」
遠い夜空、気付くと、故郷の方向を無意識のうちに眺めていたみたいだ。
「私が言ってるのはそういうことじゃなくて、今日は、七夕・・・でしょ?」
「あぁ・・・そういえば。」故郷では七夕の飾りをどの家もあたり前のように作っていたのだが、こちらの里では子供の頃に飾るくらいで、大人になると忘れられてしまうような存在らしい。
「あなたは、七夕の短冊に何か書いたことある?」
私からの唐突な質問に彼は少し困惑した。
「え・・・身長伸びますようにーとかそんなんですよ、きっと。」
「・・・叶うこともあるんだ・・・。」
情報部のくせに無駄に体格の良い彼の体がそれを物語っていた。
「先輩は何か願いましたか?」
「私はね、私は・・・・・・」
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