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□001絆創膏
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ある昼下がり、目が閉じかけた私の前に、黄色い蝶がふわふわ揺れる。何となく目で追っていると私より数歳年下であろう男の子が草原に片膝を抱いて座っている。
「・・・誰だろう?みたことない顔。」
首をかしげつつ、私はその子に近づいた。
「どうしたの?」
「・・・う、わぁ!」
少し癖のある髪の少年は驚きのあまり手に持っていた懐中時計を落とした。
「ごめんなさい!驚かすつもりはなかったのっ!」
私は草の中に埋もれた懐中時計を拾っていった。
「あ、いえ、僕の方こそすいませんでした!あ時間が!」
なんだか慌ただしく言う少年は立ち上がった・・・が
「ったぁ」
どうやら、さっき座っていたのはこれが原因らしい。
「膝、擦りむいてるの?」「あ、はい、でもこれくらい平気です。」
少年は膝に付いた砂粒を手で払ってみせた。
「では、僕急ぎの用があるので、」
小さな背丈を更に折り曲げ、ぺこりとお辞儀をして走り出そうとする少年を制止する。
「待って、」
言うと、私は近くの小川でハンカチを洗って少年の傷を拭いた。
「これで大丈夫。いってらっしゃい。」
一瞬戸惑いを見せた少年の顔は瞬時に笑顔に変わり、大きく頷いて走り出した。
少年の背中に手を振ると
「またね」
「はいっ!」


「また会いましょう、アリスさん」
森の方へ走り抜け、見えなくなった少年。
でも何故?


「・・・何故、私の名前を知っているの?」
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