夢(ロックオン)

□イタズラ
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だけど、全く同じ香りにならない。
それは兄さんと俺が別々の人間だという事だ。

「ずっと一緒にいられたらいいのに」

俺は兄さんが大好きだ。

俺をカレッジに行かせる為に、兄さんは早くから仕事をしていた。
兄さんだって、夢があっただろうに。

その仕事の為に各地を転々としていたため、二人でいる時間はほとんどなかった。

ただ、金だけ送りつけてくる兄さん。

俺は、そんな兄さんの期待に最大限に応えたかった。

兄さんに早く楽をさせてやりたい、ちゃんと卒業して、いい会社に入って…。

もう、金の心配なんてしなくていいから、今の仕事やめて、今からでも自分のやりたいことをやって欲しかった。
…今の仕事が、ヤバい仕事なのは薄々気づいてた。
だから余計だ。

再就職したと言っていたが…多分今までよりヤバい仕事なんだろう。転居先すら教えてくれないのだから…暫く会えなくなるなんて…このまま一生会えなくなるなんて事になりかねないんじゃないか?

ライルはニールのベッドでゴロゴロする。
やっぱり一度ちゃんと話をしないと駄目だ。

そうこうしてたらチャイムが鳴る。

兄さん帰ってきたのか!
もしライルに尻尾があるなら千切れんばかりに振って玄関に走って行くように見えただろう。




「…………」

「あの…グリーンさん…やんな?」

「えっと…?」

「ガンスミスのおっさんの使いで、注文の品を届けに来たんや」

濃茶の髪の少年は、黒い大きな瞳をキラキラさせて俺を見上げる。

「有名なグリーンさんに会えるなんてめちゃうれしいわ!」

「はぁ」

何とも間抜けな返事だとは思ったが、それぐらいしか言葉が出なかった。

はいっ!と何やら重い紙袋を受け取る。

グリーンってのは、兄さんの仕事上の通り名みたいなもんか?

確かに兄さんの瞳は綺麗な翡翠色だ。
それが愛称として呼ばれるのも分かる。

兄さんと俺は、イタズラで入れ替わってカレッジに行った事が何回かある。

カレッジを兄さんにも体験して欲しかったからだ。

だけど、俺は兄さんに今日みたいな合コンすら入れ替わってもらうけど、その逆はない。

だから、兄さんの仕事仲間…か?その知り合いに子供といえど会えたのは初めてだ。

兄さんは何の仕事をしてるか何時も曖昧にするから。

ニヤリとライルは笑う。

知らない兄さんを知ることが出来る。
逃がさないぜ、お子様。

「まぁ、せっかく来たんだ、お茶でも飲んで行けよ」

少年はきょとんとしていたが、嬉しそうに笑うと大きく頷いた。

リビングのソファに少年を通して、キッチンでココアを入れる。

外は少し肌寒いからな。

少年は「いただきます」と言ってカップを受け取った。

結構ちゃんとした家の子みたいだ、躾をされた感じ。

「俺ってそんな有名なの?」

「むちゃくちゃ有名やで!」

少年は身を乗り出して言う。

「どんな風に?」

「どんなって…腕は一流、依頼は必ずコンプリート、あと信念があってそれにそぐわない仕事は請け負わないストイックさ!噂では凄いイイ男やって聞いてたけど、本当やな!」

兄さんをそれだけ褒められると、悪い気はしない。

それと、さっきから気になってた。
O・D色のゴツいフード付の上着を脱いだ少年は…意外に薄着でロングTシャツ一枚にジーンズにスニーカーという出で立ち。

細い手足だなと思ってたけど…。
何か、微妙に…胸元膨らんでる?

「めちゃ憧れてたんやで、お使い頼まれて嬉しくて嬉しくてさぁ!」

ああ、そういや中身まだ見てなかったな。

…つかさ、ガンスミスとか言って無かったか?
悪い冗談でなければ…兄さん、アンタかなりヤバい仕事してるんじゃないか?

「すまなかったな、わざわざ。ガンスミスのおっさんによろしく言っといてくれよ。ところで君、名前は?」

「あ、すんません!ガンスミスのおじ様の所にお世話になってるアンジェリカって言うねん、よろしゅうに」

……、女の名前だよな。

いや、そうは言っても最近はあまりそれも性別が分かる根拠にはならない。

第一兄さんでさえ、通り名で呼ばれるのだ。この…少年が同じように本名を言ってるとは限らない。

視点を変えてみる。

女だったら…ああ、意外と好みかも。
少し子供だけど。

も、少し大人になったら…きっといい女になる。

白い肌、長い手足、細い腰。
少し胸元は寂しいけど、暫くすればいい感じになるだろう。

ライルの悪い癖が出てきた。

良く言えば、モテる。
なんせこの容姿だから。

ただ、兄とは違い、…軽い。

女性に対して非常に不誠実な付き合い方をする。
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