小説(Gift)
□聖夜の……。
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『聖夜の……。』
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「今年も、もう終わりやんな」
ポツリと呟いた言葉は街の喧噪に消えてしまった。
クリスマスに浮かれた人々の中。
渡せなかったプレゼントを入れたままのコートのポケットが重い。
「なんや、寂しい奴みたいやん、俺」
去年は一緒に観たクリスマスのイルミネーションの光が胸に突き刺さる。
お互いに忙しくて、ずっと擦れ違っている。
思う様に逢う事も連絡も出来なくて。
先週、やっと繋がった電話はアッサリと切られてしまった。
プルルルルッ
プッ
『……オレだ』
「俺やけど、ちょっとええか?」
『ああ』
自分からの電話だと分かっているのに不機嫌なまま。
否……自分からだと分かったから不機嫌なのか?
なけなしの勇気が挫けそうになりながらも来週に迫ったクリスマスの予定を訊こうとした。
「あんな、来しゅ……」
『掛け直す』
ツーツーツー
電話越しに聞こえた華やかな声が。
『景吾さん』
跡部を呼んだ。
その瞬間に、あっという間に切られた電話。
「……もうあかんのかなぁ、 俺ら」
電話越しとはいえ、久し振りに聞けただけでも俺は。
嬉しかったんやけど。
「……これ……どないしよ」
テーブルの上にあるプレゼントを見詰めて溜息を吐いた。
見つけた時、跡部に似合うと思ったんやけどなぁ。
結局、掛け直すと言った電話は掛かって来なかった。
あの日から、テーブルの片隅に置いてあったプレゼント。
何故か今日、コートのポケットに突っ込んでいた。
「逢う予定もあらへんのに……何してんのやろ」
自嘲しながら、イルミネーションの前で立ち尽くしていた。