小説(Ice Parallel)
□愛しい君 特別ver.(連載停滞中)
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「ライバル」
語り 跡部 景吾
それはある晴れた日の昼休み。
忍足侑士と跡部景吾が、ここ最近の定番の場所である、体育館裏の温室で、仲良く昼食を摂っている最中の事だった。
「侑ちゃ〜ん」
何処からか、のん気な―――跡部が今一番聞きたくない人物の声が温室のドアに近づいてくる。
「チッ…とうとうここも見つかったか…」
思わず忌忌しげに舌打ちをする跡部に、忍足はそんな酷い言い方せんでも、と窘める。
しかし、跡部としては、折角校舎から離れたこんな辺鄙な所までわざわざ来たって言うのに、と思わず渋い顔になる。
アイツに邪魔されないように学校中を移動しまくっているのに、何故か何日も立たない内に見つけてやって来ては邪魔しまくりの慈郎に、どうしていい顔が出来よう、イヤ出来る筈が無い。
……正直そろそろネタ切れだ。
しかし、跡部の苦労や苦悩(笑)を知ってか知らずか忍足はニコニコ笑ってこんなことを宣うのだ。
「みんなで食事した方が楽しいやん」
「そうそうッ、たのCーよー♪」
尻馬に乗るように忍足の言葉に被せてヒョッコリと顔を出したアイツ――芥川慈郎の、
一見ノー天気そうに見えるが実は確信犯なんじゃないかと最近疑い始めたそのへにゃ顔に、オレは口角がひくつくのを抑えきれなかった。
……その後、結局昼休み中ずっとベタベタベタベタ……ッ!
忍足にくっついていた慈郎に、額に幾つも青筋を拵えながらも我慢したオレは、自画自賛したい位偉かったと思う。