小説(Ice)
□「イカロス」
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【イカロス】(全P.7+後書き) 語り 向日 岳人
あれは、何年か振りに大雪が降ったある冬の日。
もう二月に入っていて、おれ達三年は自由登校に切り替わっていてその日は数少ない登校日だった。
忍足と帰りの待ち合わせをしていたが、長引いてしまったウチのクラスと違って、先にHRが終わった筈なのに迎えに来ない。
おかしいな、と忍足を教室に迎えに行って、まだ残っていた同級生に確認すると、案の定HRはすぐに終わって、忍足はすぐに帰ったそうだった。
下駄箱を見に行くと、既に靴は無かった。
一瞬、おれとの約束を忘れて帰ったのかと思ったが、約束事にウルサイ忍足に限ってそんな事はないだろうと思い直して、しょうがない、と外に探しに行く事にした。
「クソクソッ!こんなクソ寒いのに、何処行ったんだアイツは!」
ぶちぶち言いながら、下駄箱を出ると、傘では避けきれない吹きつける雪風の冷たさに肩が竦む。
グチャグチャと沢山の足に踏みつぶされた雪の名残に、足からすぐに冷えきって、完全防水のヤツ履いて来ればよかったかも、と思わず足下を見下ろした。
――そこで、校門に向かう沢山の足跡から外れて、一つだけ逆方向に向かう跡が微かに残っているのに気づいた。
点々と残る独りぼっちの足跡。
その方向に何となくピンと来る。
……多分、そこに忍足は居る筈だった。
おれは靴が濡れてくるのはもう諦めて、ヤツを迎えに降り積もる雪をガシガシ踏みしめて、歩いて行った。
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