+楽曲モチーフ作品+

□疑問の中で
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右手には拳銃
左手には小さなナイフ

それらを駆使して、俺は命を繋いでいた。

パァンッ

右手の銃が火を噴く。
反動に足を踏ん張って、次には背後の相手にナイフを放つ。

弾は左胸に…
ナイフは眉間に…
それぞれ寸分違わずそこを射抜き、相手の命を奪った。

今日も俺は生き残った…
今日も相手を血に染めた…

生き残ったことに安堵しながら、その場にしゃがみこむ。
だらりと下げた手の指先が、ぴちゃりと水音をたてた…
見れば、赤い液体が足下をぬらしている。

汚れた指をズボンで拭いて…
その手を懐に入れる。
内ポケットを探り、一枚の写真を出した。

写っているのは二人の青年。
肩を組んで…楽しそうに笑っている。
手には、軍への入隊許可証。

「アージェンタイン……」

その内の一人の名を呼んでみても、答えが返るはずもない。
そしてもう一人は……

「なぁ…お前は、どうやって笑ってたんだ?」

笑い方を忘れる前の俺。
今の俺にはもう……写真のように笑うことはできない。

「なぁアージェンタイン…俺は、間違っているのかな?」

アージェンタインは軍に殺された。
ただの駒として…上に捨てられたんだ。
やってもいない罪を着せられ…そのまま消された。

「お前は…俺を笑うか?」

軍を除隊して…
軍に喧嘩を売り続け…
ついには追われる立場になった俺を、お前は笑うか?
バカだな…って、笑うか?

「敵は……どこだろうな」

初めは、軍の上の奴らを敵と思ってた。
でも、俺が殺したのは…かつての俺やアージェンタインのような下っ端の奴らばかり。
あいつらは…

「仲間だったんだよな」

なのに…殺した。
上の奴はのうのうと生きてて……
死ぬのは下の奴らばかり。

正義の為…
そう思って始めたことなのに。

「俺の正義は…どこにいっちまったんだ?」

今はただ、生きる為に相手を殺す。
そこに、正義なんかない。
あるのは生への執着だけ。

分かんねえ…
もう、何も分かんねえよ……

敵はドコ?
相手はダレ?
正義はイヅコヘ?

「答えろよ…アージェンタイン」

答えるわけもない友人に、俺はすがった。
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