+楽曲モチーフ作品+

□蝶
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突如現れたアゲハ蝶。
祭りの夜、町に来た蝶は、ひらりひらりと音楽に舞った。
金色の髪…ブルーの瞳……それを包む漆黒の旅装束。
篝火の中、それは酷く映える。

町の人も、彼女のように偶然立ち寄った旅人も…
全ての目は舞う蝶に注がれた。

「お姉ちゃん、綺麗だねぇ」

舞うのを止めた蝶に、一人の少女が駆け寄った。
手には花の首飾り。
この町が、旅人を歓迎する際に用いるものだ。

彼女はにこりと笑うと、その輪を首に掛けてもらうべく頭を下げた。
少女の小さな手によって、蝶の中に新たな色…紅が加わった。

と、そこへ一人の男が走ってくる。
丁度、蝶と同じような年齢。
顔立ちからして、少女の兄のようであった。

「すみません、妹が」
「いえ、こちらこそ…これ、有り難う」

首飾りを指さして微笑み、蝶は少女の頭を撫でた。
少女は、それに対し嬉しそうに笑う。

「ねぇお姉ちゃん!こっち、こっち来て!!」

ふいに少女は、何かを思いついたように蝶の腕を引っ張った。

「えっ?」

蝶は驚いた顔をし、少女に引かれるがまま走り出す。
男もそれを追った。



少し走ると、小さな河原に出た。
そこは、少女が気に入っている場所。

「ぅわあ…」

風景の美しさに、蝶も感嘆の声を上げる。

「蛍、綺麗でしょ!?」

蝶の反応に、少女は気を良くして笑う。
蝶とは呼べないが、少女のその笑顔もまた、凄く愛らしいものであった。

「…貴女のことがよほど気に入ったようですね」

それを見た男が苦笑気味に言えば、

「光栄ね」

蝶はそう言って微笑んだ。

3人並んで腰掛けて…
そうして蛍を見ていたら、また曲が流れ出す。
蝶はすくと立ち上がると、軽く礼を取った。

「じゃあこの風景のお礼に、一曲踊らせて貰おうか」

言って彼女は舞い出した。
蛍の光をその身に携えて……

きらきら
きらきら

まるで蝶の燐粉が舞うように…
蝶は蛍の光を散らして舞う。

「綺麗ぇ…」

少女はそれにうっとりした目をし…
男は声も出せない程に目を奪われた。
いや、心まで奪われたのかもしれない。

時も忘れ、蝶は舞う。
時を忘れ、二人は魅入る。
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