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□二人で一緒に
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刹那はトレミーの廊下でフェルトに声をかけられた。
「刹那、ヒマ?」
「忙しくはない」
今はトレーニングから戻ってきただけであるし、休みたいほどでもない。
「部屋に来て」
フェルトの言葉に何の躊躇いもなく頷き、そうして付いて行った。
「これ」
部屋に入って、真っ先に白い大きな布を渡された。
「なんだ、これは」
これも、と続けて渡されたのは手編みかと思われるバスケット。
「今日はハロウィンだから」
「……わかった」
ようやく合点がいった。刹那にそれを否定する義務もならければ断る気もない。
二人は準備を始めた。
オペレーションルームではスメラギが大きな画面にかじり付きつつ酒を飲んでいる。脇にそんなスメラギを諭しているクリスもいる。
急に開く扉。気付いた二人は扉の方を向く。
そこにいたのは白い布を被ったモノ達。
「トリックオアトリート!」
低い声と高い声が同時に言う。
目を丸くしたスメラギはそれらに近づく。
布には穴が二つあり、それぞれ赤い瞳と青い瞳が二つづつ覗いている。
自分より低い二つの白い布お化けに、スメラギは優しい笑顔で頭を撫でる。
「そうね。今日はハロウィンだったわ。お酒でもいいかしら?」
「駄目ですよ!スメラギさん!えっとーお菓子お菓子…」
手に持っていた酒をバスケットに容れようとするスメラギを止め、ポケットに何かないかと漁る。
「チョコでいいかな?」
ひとつずつ、チョコをバスケットに容れる。
布で顔が隠されていて表情は読み取れないが、顔を見合わせた二人は嬉しそうにオペレーションルームを去っていった。
ノックする音に気付いたアレルヤは扉を開ける。
「トリックオアトリート!」
重なる二つの声。
勿論、アレルヤには分かっている。
「ちょっと待ってて、取ってくるよ」
戻ってきたアレルヤの手にはクッキーの箱。
「二人で半分こでいいかな?」
コクリと頷く二人。アレルヤに軽く礼をして部屋を去っていった。
食事でもしようかと部屋を出たティエリアは白い物体にぶつかる。
「…何の用だ」
「…トリックオアトリート…」
今までより控えめな声で二人は言い、バスケットを掲げる。
それを見ると、ティエリアはくるりと後ろを向き、部屋に戻ってしまった。
「ティエリアの所まで来る必要はあるのか?」
「ティエリアも仲間」
こそこそと話し合う。赤い瞳のお化けもどきは眉根を寄せている。
再び開く扉。
「これでいいだろ」
赤い瞳には赤い飴玉。青い瞳には青い飴玉。それぞれの色にあった飴玉である。
さすがにティエリアは何もくれないだろうと思っていた二人は驚く。
ついティエリアの顔を凝視してしまうのだった。
「他に用がなければ早く行け。俺は忙しい」
いつもの冷たい眼差しに睨まれ、二人は走るように行った。
そして最後に来たのは、フェルトも刹那も大好きなロックオンの所。
「パス、俺が知ってる」
「じゃあ驚かす?」
「いい考えだ」
刹那がパスを打ち込み、開くロックオンの部屋。
ロックオンはベッドで軽い寝息をたてていた。これだけの気配に気付かないのだから、疲れているのかもしれない。
しかし二人はそんなことお構い無しにロックオンのいるベッドへダイブする。
「ぐぇっ!」
「起きた」
「ロックオン起きた」
蛙の潰れたような声を出してロックオンは目が覚める。そうして乗っかっている二人に気付く。
「トリックオアトリートッ!!」
今までで一番大きな声で、今までで一番嬉しそうに二人は叫んだ。
「刹那にフェルト?どうした」
「今日はハロウィン」
「だからロックオン、トリックオアトリート」
寝起きの頭もやっと覚醒してきて状態が飲み込めた。
「あー…俺、お菓子何もない…」
そう言いながら、二人を覆っている布を取り去る。中からは膨れっ面の刹那とフェルト。
「じゃあいたずらする」
「覚悟しろ」
「わーっ!待って!待てって!」
今にもロックオンをくすぐりだしそうなフェルトに、近くのハロを取り上げてすぐにでも投げそうな刹那。
「待たない」
「だって今日はハロウィンだから」
「わーったわーった!」
これでもいいか?と尋ねたあと、ぎゅっとロックオンは二人を抱きしめる。
「…代わりになんかなんないだろうけど…」
うーんと唸っているロックオンだが、二人はクスクスと笑う。
「…何だ?」
「だって、これも嬉しい。あったかい」
「お菓子よりもいい」
そんな二人を見て、ロックオンも微笑む。
「そーか」
「うん」
「そう」
あったかいハロウィン。幸せなハロウィン。
来年のハロウィンはみんなにこれをしてもらうのもいいな、と二人は思ったのだった。
"…ティエリアは御免だな"
"うーん…"
〜後書き〜
普通に公式のまんま(え?)
ロックオン×(刹那+フェルト)
かな?
時間軸的に刹那がCBに入って一年もたってない頃か。…いつ、こんなに仲良くなったんだか…
それにしても、刹那が幼い…
フェルトが可愛いよVv
では、ありがとうございました。
081020
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