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□ただ、呼びたい。
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ずっと、このままでいられたら、どんなにいいだろうか。





静かな空間。ただ紙をめくる音がするだけ。
トレミー内のブリーフィングルームにいるのは刹那とロックオン。二人は次のミッションに向け、作戦内容の書かれた資料を読んでいた。

――刹那

向かいに座っている相手に伝わらないように、心の中で呼ぶ。
しかしその視線には気付かれてしまったようだ。

「ロックオン、どうした」

すぐに返答出来れば怪しまれなかったのかもしれないが、その時のロックオンは詰まってしまった。

――いつまで刹那の傍にいられるのだろう。


刹那の視線と絡んだときにそう思ってしまった。
いや、戦争がなくなってソレスタルビーイングが解散、という意味ならそれでいい。
ロックオンが思ったのは、

どちらかが、いなくなってしまったら

この宇宙にいるならば、それとは常に背中合わせの状態だ。
この組織に入った時から覚悟していること。
なのに、

「本当にどうした?固まってたら分からない」


この少年と、離れたくない。


「……いや、ちょっとぼーっとしてただけだ」
「そう、か」

上手く嘘をつけない自身が情けない。

「……刹那」
「なんだ」

ごまかすだけ。
本当は呼びたかっただけ。
返事を返してくれるから、刹那がそこにいるということが実感出来る。

「…さっきからお前変だぞ」

小首を傾げて、刹那はロックオンに近寄ってくる。

「刹那」
「用は何なんだ?」

脇に立たれ、ロックオンを見上げている。
だからつい、

「刹那っ…」
「っちょ、ロック……」

抱きしめた。手を引いて、自分の方へ引き寄せる。

「ただ、呼びたかっただけ。それだけなんだ…」
「ロックオン……」

刹那は抗わない。ロックオンの胸にすっぽりと収まったまま。

「刹那…………いや、ソラン…」
「………なんだ、ニール」

互いの本名で呼び合って。
ここに他の誰もいないから許されることで。

「今日は俺の我が儘許してくれよ?」
「何を今更、ニール」

刹那は僅かに震えるロックオンの背を抱きしめる。全く、どちらが年上か分からない。

「…俺はここだ」
「分かってるさ……刹那」

互いを抱きしめ、温もりを確かめ合う。
時々思い出したように名前を呼び合う。それは相手をこの世界に繋ぎ止めておくように。



明日をも知れぬ命ならば、今この時を。













"後書き"
随分と書きたかったイメージから離れたな…。
何番煎じにならないように、はしょりまくりました。でも、『名前』は絶対呼び合って欲しいです。
…やっぱ自分には荷が重過ぎるネタだったな。

では、読んでいただきありがとうございました。


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