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□兄というもの
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「おはよ、刹那君!」
「ああ、おはよう。」
朝練が終わって教室へと向かうさい、刹那はクラスメートの沙慈に会った。
「昨日の数学の宿題してきた?」
「いや、まったくしてない。」
ごく一般学生の会話。刹那でも、普通のように笑う。
教室へ行くと、ルイスが沙滋に飛びついてきた。
「沙慈ー!おはよーっ!!」
「ちょっと…!ルイスッ!倒れるって!」
そんな二人を尻目に、刹那はリュックを机へ置いた。
一限目の準備をしようと、リュックを開けた刹那はその瞬間固まった。
「どうしたの?刹那君?」
それに気づいた沙慈が問い掛ける。
「…弁当忘れた。」
「えっ、じゃあお昼に購買行く?」
「…金も無い。」
刹那は眼で見て取れる位に落ち込んでいた。
「うーん…。刹那君はいつも沢山食べるからね…。」
刹那は影が落ちる程落ち込んでいる。
さすがにそんな刹那を見ると、沙慈は何かをしてあげなくてはいけない気になってくる。
「じゃあさ、僕のお弁当分けてあげるよ。少しだけどね。」
申し訳なさそうに言うが、その言葉を聞いた瞬間に刹那の顔が輝いたのは言うまでもない。
「でも、足りないよね。」
ルイスのツッコミ。また、刹那は沈む。
「……ご飯…。」
「じゃあ、おごろうか?」
刹那は首を横に振る。
「さすがにそこまではいい。ただ…少し分けてくれ…。」
今日一日生きられるのかというくらい、刹那の沈みようは酷い。
「困ったね…。」
そんなとき、フェルトが小走りでやってきた。
「あれ?フェルトちゃん?君は一年生だけど…この教室に何か用があるのかな?」
フェルトは刹那に近寄る。
「お兄さんがお弁当渡すから来てって…校門に。」
囁くように、それでいてしっかり用件を伝える。
それを聞いて、刹那は急いで廊下に出て窓から外を見下ろした。
「ティエリア…ッ!?」
刹那の眼には、校門に寄り掛かりながら空を仰ぐティエリアだった。
それを見付けると、周りも気にせずにまっすぐ向かっていった。
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