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□天の美禄
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出会い



side:setsuna

 ソレタルビーイングに入って初めて、他のマイスター達と顔を合わせた。

 最初に考えたことは、どうでも良い。所詮、なれ合うつもりもないし自分はガンダムに乗って戦争を根絶すれば良いだけのこと。

 次にしたことはどんな奴等なのかを観察すること。

 正面の長身は気が弱そうだ。とりあえず、こんな自分にそうそう構っては来ないだろう。隣の眼鏡は表情がさっきから何も変化しない。冷酷そうだ。まあ、こういう奴は他人と干渉したがらないからこっちにとっては都合がいい。

 問題は…後ろの飄々とした奴だ。口調から、雰囲気から相当のお人好しだと伺える。こういう奴は嫌いだ。何かとつけて自分に構ってくるだろう。

 まずは、俺はガンダムになって戦争を根絶する。それだけだ。



side:lockon

 新入りが来たと思ったら、かなりの子供。ヴェーダはこいつにどんな試練を与えるつもりなのだろうと思った。

 何事にも動じないような真っ直ぐな赤い目。まるで猫のようだ。いつもの癖かつい構いたくなるが、向こうはそれをよしとしなさそうだ。構わず関わってみるつもりだがな。

 こいつは面白そうだ。直感がそう言っている。

 さて、どうやってこの猫を手懐けようか?





パーティー



side:lockon

 刹那が来てから2、3日過ぎた頃。なにやら、トレミー内が慌ただしい。まだ、何もしないはずなのだが…。

「ミススメラギ、何があるんだ?」

丁度近くにいた戦術予報士に聞くことにした。

「えー?パーティーよ!パーティー!!刹那が入って、ソレスタルビーイングもフルメンバーになったっていうのに、何かまだみんな仲良くないし。だからこういう時はみんなではしゃいで仲良くなるのが一番だと思わない?」

 まあ、彼女の言うことも一理ある。自身もそれに賛成だ。

「じゃあ、後で行きますよ。」

「あ、じゃ刹那にも声かけといて!」

個人端末で呼べばいいじゃないかとふと思ったが、彼女はそれを察したようで。

「だってあの子、ほとんど話さないし、一人でいるし。心配じゃない?マイスター最年長者として声を掛けてきなさいよ!」

「はいはい」

つい、二つ返事で答えてしまった。自分も刹那と全く話してないし、声を掛けてくるかと部屋へ向かった。



side:setsuna

部屋で自主トレをしていた頃か、ロックオンがノックを二回して部屋に入ってきた。

「何のようだ。」

「えーと、この後何かパーティーやるんだってよ。ミススメラギの発案だそうだ。」

「行かない。」

間髪入れず答える。

「いや、お前が来ないと駄目だろ。メンバーの親睦を深めるのが目的でやるんだから、新メンバーの刹那がいないと始まらないだろ?な?」

どうやら、この男は自分をそこに連れ出さないと気が済まないらしい。それに、ミススメラギの発案。行っても損はないと思った。

「分かった。後で行く。」

 ロックオンもその答えに満足したのか、

「じゃあ、後でな。」

 と手を振って部屋を出て行った。

 しかし、あの男は見た目通りの人のいい奴のようだ。大方、ミススメラギにでも声を掛けられたのだろう。わざわざ自分の所に来るなんて。





パーティーor宴会



side:setsuna

 トレミー内一番大きい大広間に足を踏み入れたとき、すでに人は沢山いた。こんな多人数がソレスタルビーイングのメンバーなのだと知るとすごい組織なのだと改めて思う。普段見かけない技術部、医療部、そのほかにも沢山の人がいた。

 その中に、マイスターの3人が端の方で変な雰囲気の中、何か飲んでいた。自分もまずはそこに行くべきだろうと思い向かった。

 ロックオンが俺を見つけると手を振ってきた。ちなみに、アレルヤも小さくは手を振っていたが、ティエリアはそんなことお構いなしに飲んでいた。

「刹那!よく来たな!」

「別に大事な用は無い。」

自分も何か飲もうと、側にあったグラスに手を付ける。飲んでみれば、甘いものの何か別の匂いがした。それでも構わず、とりあえずグラスを一杯空けた。飲まないと何か子供扱いをされる気がした。



side:lockon

 まさか、あの人を寄せつけたがらない刹那がこんな所に来るとは。これからどうしようかと逡巡していると、目の端にアレルヤがティエリアを気遣っている様子が入ってきた。

「ティエリア?まさか、お酒弱いの?」

「うるさい。話し、かけるな…」

 どうも、酒に酔ったらしい。あの氷のような少年が酒一杯二杯で赤くなるというのは見ていて面白いと思った。

 ふと思う。ここのテーブルには五、六このグラスがあって、自分のも酒だし、ティエリアもそうだ。顔には出てないが飲むときに少し顔をしかめたアレルヤもそうなのだろう。ということは、半分以上のグラスには酒が入っていたということになる。周りを見渡してみると大体の人が酔いが回ってきて、パーティーというより宴会状態になっている。

はたと気付く。刹那が飲んでいたものは何か?

刹那は未成年。しかも、酒とはほど遠い年齢。

 振り返ってみるとグラスを握りしめ、ポケーとしている刹那がいる。しかも明らかに顔が赤い。

「…ロックオン?どうした?」

 どうしたはお前の方だ!絶対酒飲んだな!!

 若干舌足らずで紅潮した頬潤んだ瞳で上目使いされりゃあ誰だってドキッとはするものだよな?

「せ…刹那?な…お前…」

 動揺で満足に言葉も言えない。

 刹那は今にも倒れそうで、誰かが支えてあげていないとまずそうだ。

「アレルヤ、刹那なんか酔ったみたいだから部屋連れてくわ。あとよろしく。」

 酔ったティエリアをなだめていたアレルヤは、情けなく手を振って見送ってくれた。


 まさかなぁ…すぐにこんな事になるなんて。何が悪いといったら、酒を普通に出しておいたミススメラギが悪いんじゃないかと思う。あの人は好意だろうが…未成年が最低3人いることを覚えているのか?





羽化登仙



side:lockon

 刹那の部屋に入るためには、刹那が鍵を開けているか鍵を持っているかのどちらかが必要となる。残念ながらどちらも当てはまらないので、自分の部屋に連れて行くことにした。

 部屋に入ってすぐに刹那をベッドに運び、水を出す。

「刹那、それ飲んで早く寝ろ。明日、具合悪くなるぞ。」

 自身もベッドに腰掛け、はあっとため息をつく。しかし、酒一杯でこんなにもなるものなのか。まあ、子供なのだからと一蹴し隣の刹那を見やる。

 刹那は言った通りに水を飲んでくれていた。

 しかしまあ、何だ。いつもキッツイ表情しかしてなかったのに、緩んでいるこの表情は可愛いものだと思う。いや、決して変態じゃないぞ?

「ロックオン……」

「何だ?――っておい!」

 不意に名前を呼ばれ、その上刹那がもたれかかってくる。身長に差があるから丁度刹那の頭は自分の肩辺りになる。

「なあ、ベッドの中入ってろよ。寝にくいだろ?」

 半分本当のこと。残りは、軽く動揺しているせいである。

「…温かい…」

 それに、何の脈絡もない言葉で返す刹那。

 思ったのは、いつも一人でいるが、本当は誰かに側にいて欲しいんじゃないかということ。無防備に寝息を立て始める刹那は年相応の少年に見えた。つまりは可愛いということ。

「全く…。」

 苦笑する。

 刹那の唇に自身のそれをそっと擦るくらいに合わせる。音も何もしない。ただ、自分の唇にその感触が残っているだけ。

「なにやってんだか。」

まあ、とりあえずは刹那が起きるまでこの空間を楽しみたいと思う。刹那が起きないようにそっと手を回し、抱きかかえるように自分も目を閉じた。



side:setsuna

 パーティー会場で飲み物を飲んだときから体が重くなったようで、全体的に景色が歪んだ感じがした。そこからの記憶がはっきりしない。

何となく、温かさを感じた。子供の頃家族と過ごした遠い日々のように。母親に名前を呼ばれた気がした。でも、そこを見るといるのは母親ではない。ロックオンだった。その側は温かい。久しぶりの懐かしい感覚。

気付けば、ロックオンは自分の唇に温かさをおとしていく。それは――心地よかった。






忘憂の物



side:setsuna

 ふと、目が覚める。頭がいたい上に気持ち悪い。ここは――自分の部屋じゃない。誰かに抱きしめられている。隣にいるのは…ロックオン?!

 確かに…うろ覚えの記憶の中にロックオンはいる。そして、唇に疼くような感覚も残っている。何があったかを隣に聞きたいような、聞きたくないような…。思案していると、寝ていると思っていたロックオンがにやにやしながらこちらを見ている。

「……何だ。それよりも何があった。」

 まだ、ロックオンはにやにやしたまま顔を覗き込む。

「なんだあ、覚えてないのか。お前、パーティー会場で酒飲んで酔っぱらってたんだぞ?それを俺がここまで連れてきたというのに。お礼もなしか?」

「すまない…。」

 ロックオンはからからと笑う。

「あっはっは。いいんだ、そんなこと。それより、酔っている間のこと何も覚えてないのか?」

 さっきより、少し真面目に聞いてきた。

ほとんど夢を見ているようだったから、記憶は無いに等しい。しかし、あの唇の疼き、温かさ…あれは現実か?聞くとしても、なんと聞いたらいいのか。

それは、俗に言う「キス」というものじゃないのか?これは…言うべき事ではないだろう。

「いや、何も覚えていない。」

 そっかぁ、とロックオンは背伸びをする。

「俺、ちょっとみんなの様子見てくるから、もうしばらく休んでな。」

そう言って、ロックオンは部屋を出て行った。

時計を見るとパーティーに行ったときから5,6時間過ぎている。行ってすぐに飲んだ酒で酔ったのだから四時間はここにいたことになる。俺が寝ていたのもそのくらいだとすると、ロックオンに抱きしめられていたのはどのくらいだ?…考えるべき事ではないな。恥ずかしい。もう子供ではないんだ。

さっきの唇の感覚も気のせいだ。やったとしても深い意味なんて無いのだろう。

――でも、久しぶりの温かさ。ロックオンの側でそれが感じられるのなら、別に近くにいるくらい良いのではないかと思ってしまう。



side:lockon

刹那が起きて、キスをしたことに気付かれていないか心配だったが覚えていなくてほっとした反面、少し残念だった。

抱きしめている間、子供の体温というのはどんなに温かいのだろうと思った。まあ、これを言ったら殺されかけるな。

部屋にいたとき、邪険に扱われていないのだから少しは心を許してくれたのかと思う。ということはこれから側にいればもっと懐いてくれるかもしれない。浅はかな考えかもしれない。けれど、それを望んでしまう。

ああ、楽しみだ。



このあと、ミススメラギによると接近戦の得意なエクシアと遠距離援護の得意なデュナメスはコンビを組むことが多いと聞いて尚更楽しみになった。

さあ、どうやって手懐けよう?













後書き

だぁぁぁ!初めて書いたガンダムOO!疲れた!書くとは思わなかった!まさかロク刹を書くなんて!

内容補足として大きなパーティーホールのような所がトレミーにあるか知りません!捏造です!部屋の鍵の仕組みも知りません!そもそも最初の出会いがいくつなのかが分からないので本編だと21歳のクリスティナも未成年かも…。てか、マイスターとスメラギさんしか出てないじゃん!

後半のサブタイトルは、ほとんどお酒関連で付けました。

おかしいです!心境変化に無理がある!!

書き上げた日が最終回って…テンション下がりながらこれを書く。



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