ギアス小説
□変わることの無い、永遠。
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スザク、君が本来居るべき場所はそこなんだね。私の、傍、ではないんだね。
ボロボロのトリスタンの中で、あらためて実感してしまった。
苦しくて切なくて、逆に涙は一滴も落ちてはこなかった。
――――――――
ラウンズの各々に与えられている部屋。ある部屋の隅のベッドに横たわる人影が二つあった。
そろそろ空が白みはじめる時刻。
傍の想い人よりも早く目が覚めたジノは、未だ寝息をたてている一人をずっと眺めていた。
「可愛いなあ」
思わず呟いてしまう程、ジノにとってスザクはそれだけ愛らしい。
日本人にしてはたくましい体付きも、ブリタニア人のジノにとっては細いと形容してしまうくらい。それにフワフワとした茶色の猫っ毛も、今は閉じられている大きな丸い瞳も、尚更可愛いと感じてしまうのだ。
こうした関係も、スザクが入って来た時から望みだったのかもしれない。
常に厳しい目付きをしているスザクを、どうにかしてやりたいと思っていたのかもしれない。
だから、自己満足かもしれないが、今がとても満ち足りているはずなのに。
『…ルルーシュ……』
ある日のこんな時、スザクの口から零れたその言葉。
無意識の内に言った言葉だからスザクの記憶には残っていない。けれどジノにははっきりと刻まれた言葉。
ただのブリタニア人の友人の名前、と思ってしまえばよかった。でも、その名前を呟いた時のスザクの表情は、悲しみと苦しみと憎しみと愛おしみの混ざったもの。
今でも、スザクの心を埋めているのはその『ルルーシュ』というブリタニア人。
その時は、嫉妬、しか生まれなかったはずだ。
スザクが復学するからといった時、自分も行きたくなって、話を聞いたら、その『ルルーシュ』っていう名前を、懐かしそうに憎しみを込めて言ったスザクの顔が忘れられなかった。
でも、いくら相手に宣戦布告しても、スザクの気持ちが変わるはずはない。
私のこと、どう思っている?
そう聞いた時、スザクは躊躇いもなく『好きだよ』と答えてくれた。
スザクは嘘をつくのが下手なくせに。そんな分かりやすい嘘をつかないでくれ。
ああ、きっとスザクはルルーシュが一番なんだろう。ならば私は何番目なのだろう。
スザクにとって自分は何なのだろう。
ルルーシュさえいなければ――
「…ジノ?」
スザクを目の前にして、物騒な考えは捨てよう。今が幸福ならそれでいいのに。
「ああ、起こしたか?すまないな」
「ん、別にいい。もう朝だしね」
微笑むその顔は、今まで自分以外に向けられていたもの。でも、今は私のもの。
「スザクッ……」
「ちょっ!ジノどうしたの!急に抱き着いて……」
声は驚いていても、決して引き離すようなことはしない。それがスザクの優しさ。
「んー、別になんとなく……」
自分はそんな優しさに惚れたのかもしれない。
なら、優しさの矛先はスザクが決めることなんだ。自分は我が儘を言ってはいけないと分かっている。
今暫くの、幸せと温もりを噛み締めるだけでも十分。
―――――――
スザクがルルーシュを選んだのなら、自分は潔くスザクを手渡そう。
代わりにスザクを幸せにしてくれるなら。
けれど、スザク……私は、スザクが、大好きなんだ。
変わらないその想いに、地面に叩き付けられたトリスタンの中で一人、締め付けられていた。
【後書き】
ごめんなさい…
ぐだくだでした。
ジノが自己中心的ですねぇ…
ジノの一人称はこれでいいのかな?
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