002
□お寝坊さん
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慌ただしい朝の一コマ。とは言っても、慌ただしくしているのは一家をまとめる母親だけで、子供達はテレビを見ながらぬくぬくとこたつでのんびりとしている。
「ほら!朝ごはん食べちゃいなさい!」
「はーい」
「うー」
急かしているスメラギとは反対に、アレルヤとハレルヤの返事はゆっくりとしていた。
ふと、頭数が足りないことに気付く。ティエリアはこたつにもぐってテレビを見ているので起きてきてはいる。
「刹那…っ、ロックオン!刹那起こしてきてーっ」
スメラギは刹那がまだ起きていないことに気付くと、ばっと父親の方を向いて叫んだ。
新聞を読んでいたロックオンは顔を上げる。
「俺かー?」
「あなた以外誰がいるというの。ほら、新聞を読んでいる暇があるなら可愛い息子を起こしてきてちょうだい!」
「了解っと」
そうして重たい腰を上げ、未だ寝ている末息子を起こすために子供部屋へ向かった。
部屋に入り、寝ているであろうベッドを覗き込むと予想通り寝息をたてている刹那がいた。
「刹那ー起きろー」
「うー…」
だが、不機嫌そうに顔をしかめて布団の中に潜ってしまった。
「おーい、学校に遅れるぞー?」
「……眠い」
一応目は覚めているらしい。だがしかし、眠気に勝てないこのお子様は布団にもぐりっぱなしだ。
「友達や先生に会わなくていいのか?」
「……いい、眠い」
「全く…」
いっこうに布団から出てこない刹那を見て、ロックオンは困った風だったが、次の瞬間、ばっと刹那の掛け布団を剥ぎ取った。
「っ、寒い、眠い!」
「さっさと起きろ。母さんの朝ご飯だってあるぞ?」
「まだ…寝る……」
「あっ!コラ」
枕の下に頭を入れ、再び寝る大勢をとる。
ほとほと困り、ロックオンはベッドの前で腕を組んだ。
すると音も小さく、部屋のドアが開いた。
「あれ、アレルヤ。準備出来たのか?」
「うん、大体。それで、刹那起こしに来たんだ」
明るく言うアレルヤ。そんな彼に向かってロックオンは首を横に振った。
「無理だって。お父さんに起こせないなら、お前にも起こせないさ」
「そうかな」
相も変わらない笑顔で父親の発言を受け流し、とてとてと刹那のベッドの側に近寄った。
「刹那、朝ご飯はガンダムのコーンフレークだよ」
アレルヤはたった一言、ぼそりとそう言っただけ。拍子抜けしたロックオンは、もう部屋を出ようとするアレルヤに向かって言った。
「おいおい…、そんな声の大きさで刹那が気付くわけないだろ?」
「そうかな?」
ニッコリと満面の笑みのアレルヤはそう言い残して、階段を降りていってしまった。
「…子供の考えてることは分からないな……」
呟いたロックオンは再び視線をベッドに戻すと、すっかりもぬけの殻になってしまった布団が目に入った。
確認するとほぼ同時に、軽い足音が急ぐように階段を駆け降りる音も聞こえる。
「………そーかそーか…」
父親の自分がいくら声をかけても反応しなかった刹那が、ガンダムの一言でここまで機敏に動くという事実に切なくなる。それも、その行動を起こさせたのは自分ではなくアレルヤだ。
父親の威厳というのはなんだろうかと朝からショックを受けながら、ロックオンも再び階下へ戻っていった。
***
「ねぇ、アレルヤ。刹那起こしてきてくれたのよね?」
「もちろんそうだけど?何、母さん」
「…………何でお父さんがあんなにがっくりきちゃってるの?何か知ってるでしょ?」
「ううん。全然知らないよー?」
「……そう…。何かロックオンの辺りだけ湿っぽくなってて、キノコでも生えそうだわ…」
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小さい子は特に、朝起きてくるときに駄々こねます。
そして刹那はガンダムに過剰反応するものですよね。
何か、色々とすみませんでした…。
読んでいただき、ありがとうございました。
091104
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