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□白くて甘くて真ん丸で
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目を覚ますといつもより眩しい気がした。枕元の時計を確認しても朝と分類される時間。
不思議に思って光の出所である外を覗くために、ベッドから出る。もちろん、隣に寝ているロックオンを起こさないように。

「うわあ………」

刹那の目の前に広がるのは一面の銀世界。昨晩のうちに雪が積もったのである。
生まれも育ちも中東である刹那にはまだまだ珍しいその雪。今すぐにでも見に行きたいという欲求に勝てず、痛む身体も気にせずにベッドから降りて脱ぎ捨ててある服を急いで手に取った。
そうだ、これを『ホワイトクリスマス』と言うのだっただろうか。

「せーつーなー?朝っぱらからどうしたー?」
「ああ、雪が」

どうやら起こしてしまったらしい。
ロックオンはその刹那の言葉を聞いて外を見る。
朝日に輝くロックオンの白い肌。刹那はそれが眩しいと思った。

「お、ホワイトクリスマスか!そーだ。昨日の俺からのクリスマスプレゼントどうだった?」
「最悪だ」

ウインクをしながら刹那に言うロックオン。
刹那はうっすらと頬を朱に染めるが、素っ気なく返してすぐに踵を返してドアに向かう。

「あ、おい!どこ行くんだよ!」
「外で雪見てくる」
「お、おお。そうか。気をつけろよ」

返答の言葉数の少なさに苦笑しつつも、ロックオンは刹那の背中を見送った。



戸を開けた刹那は、再びの眩しさに目を手で覆った。家の周りには何の足跡もなく、自身が最初に新雪を踏むことはとても胸が高鳴るものだった。
試しに雪をすくってみる。まだ積もりたてのそれは柔らかく、手に乗せると次第に融けていった。そして冷たい。
ふとそこで思い出す。前に雪だるまというのをテレビで見たことがある。それを作ってみないだろうか。
確か雪玉が二つ乗っかっている形状。それなら自分にも作れる。
雪の中に手を差し入れ、一塊の雪を手に乗せる。素手だから冷たいに決まっているのにそれさえも気にしない。そしてその雪を両手を使って丸くなるように握る。
多少いびつな気もするが、初めてでこれだけ出来れば上出来だ、と自身を納得させそれをもう一度繰り返す。

「……出来た」

ひとつ目の雪玉は掌よりも大きく、ふたつ目の雪玉は掌にのる大きさ。二つを重ねればそこには雪だるまが出来ていた。
しかしどこか物寂しいと気付いた刹那は近くに落ちていた小枝を手の代わりにと付ける。
これでようやく雪だるまらしくなった。刹那は満足そうに微笑む。

「あ」

ポンと手を打った刹那はまた何かを思い付いたようだ。
先程作った雪だるまは玄関の側に置いて、再び新雪の積もる外へと駆けていった。



「刹那?」

いつまでたっても帰って来ない刹那が気になり、ロックオンも外へと出る。雪による反射にロックオンも目を細くした。
すると、遠くの方で屈んで雪に触れている刹那を見付けた。
ああ、遊んでるんだな、と微笑ましく思ったが刹那には手袋も何も着けていないということを思い出す。

「っ刹那!寒くないのか?!」

慌てて大声を出して刹那を呼ぶ。その声に気付いた刹那は振り向いた。

「ロックオン!」
「お前寒くないのかよ?!」
「それより、これ見て」

ロックオンが近くに寄ると、差し出されたのは小さな雪だるま。小枝が差し込まれただけのシンプルなものである。

「…お前が作ったのか?」

こくんと頷いた刹那の顔はどこか誇らしげで、ロックオンはふっと笑う。

「よく作ったな。初めてなのに」

そう言って頭を撫でてやる。そうすると照れながらも嬉しそうに笑った。

「あれも」

刹那が指差した先は玄関。そこにあったのはもうひとつの雪だるま。

「ふたつも作ったのか?」
「だってひとりだと淋しいから」

ロックオンをじっと見上げ、刹那は言った。

「そうか、そうだよな」
「ああ」
「じゃあその雪だるまもあそこに置いて、早く中に入ろうぜ?」

寒いだろ?と付け加えて刹那の手を引く。しかしそのあまりの冷たさにやっと気付き、ロックオンは目を丸くする。

「刹那っ?こんなに冷たくなって大丈夫なのか?!」
「大丈夫だ」
「大丈夫なわけ――あ、なら」
「何だ?」

そう言ったロックオンはもう片方の手をとって、自身の両手で包み込む。

「あったかいだろ?」
「………うん」

ロックオンの手の温もりが刹那に伝わる。

「…そろそろ中入るか?ココアも作ってやるし」
「ああ、飲む」

ロックオンは刹那の手を再び引いて家へ向かう。もちろん手は強く握ったまま。

「…ロックオン」
「ん?」

ふいに話し掛けられ、振り向く前に頬に冷たいものが触れた。

「…冷たいな、刹那の唇」
「あっ、すまない…」
「でも甘い。これは刹那からのクリスマスプレゼント?」
「まあ…そういうことにしといてやる」

そっぽを向いた刹那を構うことなく手を引いて、二人は家へ入って行った。
玄関の雪だるまも互いの小枝が交差し、手を繋いでいるかのようだった。







〜後書き〜
08クリスマス文ロク刹Verでした。
甘く甘くしたかったんだけれどもどうも思い通りにはいかないものですね。
ちなみに場所はロックオンの地上待機用の家のつもり…。
一戸建てって大丈夫なのだろうか…。

読んでいただきありがとうございました。

081219


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