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□非日常の灯
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一人の部屋。ただ黙々とシャーペンを走らせ、参考書とノートを見比べているティエリア。
部屋の明かりは手元のスタンドのみ。
いつもと変わらない勉強風景。
いつもと変わらない日常。
普段ならこんなときに誰も邪魔をされることはない。けれど今日は違っていた。

「…ティエリア?」
「何だ。刹那」

静かに扉を開けて入って来たのは刹那。
不思議に思ったが、ティエリアにとっては邪魔なだけ。

「今日の夕飯、何がいい?」
「何故俺に聞く?」
「母さんが……聞いてこいって」
「……美味ければ何でも」
「わかった」

それだけを聞くと、刹那は戸を閉めて行ってしまった。
いつもなら夕飯なんて自分に聞くことも無いのに。
頬杖をつきつつ疑問に思ったが、どうでもよいと一蹴し、再び机に向き直った。


そのうちに、今度はアレルヤが入って来た。どこかおどおどしているのはいつものことか。

「ティエリア、今度の休みにどっか買い物行く?」
「何故」
「えーっとえーっと…」
「意味の分からないことをするな。それに欲しいものなんて別にない」
「……そう」

アハハと力なさ気に笑ってごまかす。なんだこの長兄は。
そもそもなんだ。刹那といいアレルヤといい、何故こうも意味の分からないことをしにくる。

「用がないならさっさと出ていけ」
「あ…うん…」

返事をしたアレルヤは何かぶつぶつといいながら部屋を後にした。
今日は一体全体なんなのだろうか。


しばらくして空腹に気付く。間食でもしようかとティエリアは下に降りた。
台所にはいつもと違い、早々とスメラギが調理を始めていた。

「母さん?もう夕飯の準備ですか?」
「え、ティエリア?!えーっと…うん。そうなのよ!で、どうしたの?ティエリア」
「間食に何かないかと」
「あ、じゃあテーブルの上にあるみかん持って行って!」

素直に頷き、みかんを取って上に戻る。
それにしても何か様子がおかしかった気がする。まるで何かを隠しているような、そんな感じである。
今日は何かあったのだろうか。
こうも三度、いつもと違うことがあるとなると気になってきた。
誰かに聞くのが得策だろうか、と考え刹那に聞こうと思い付く。ちょうどみかんもあることだ。



「刹那、少しいいか」
「何だ?」

刹那の部屋を訪ねると机に向かって何かしている最中だった。

「今日は何かあったのか?」
「………」
「…沈黙は肯定とみるが」
「………………別に」

戸を閉めてすぐに口を開く。返ってくるのは沈黙。
唯一の返答も是非は決まらない。

「……答える気がないなら仕方ない。俺の思い過ごしだろうな」
「…ティエリアは記憶力いいのか?」

反対に質問され首を傾げる。

「なんだそれは。俺は記憶力のある方だと思っているが?」
「いや……何でもない」

刹那の表情からは考えていることを読み取れない。

「…まあいい。それじゃ」
「あ、ああ」

すぐに机の上のガンプラへ視線を戻した刹那を横目に部屋を出た。
別にいつもと違うことが重なったっていいじゃないか。何を気にする必要がある。
そう言い聞かせ、自身を納得させた。



そろそろ暗くなる室内。さすがにスタンドだけでは見にくくなってきた。勉強も止め時だろう。
コトッとシャーペンを置き、疲れた目を擦る。
急に戸が開く。

「ティエリアー飯だぞー」
「…急に入らないで下さい、父さん」

ロックオンは片手をひらひらとさせながらティエリアを呼ぶ。

「あ、ワリイ」
「なんで父さんまで入ってくるんです?」
「あー…うん。あれだよ。下行けば分かるって」
「下?」

ああ、今日は訳の分からないことばかりだ。
とりあえずロックオンに促されるまま階段を降り、リビングの戸に手をかける。
そのままの状態でちらりとロックオンを見たが、いつものようにへらへら笑っているだけ。
戸を開けると、そこにはいつもと違う光景。

「ティエリア、誕生日おめでとー!」
「………え?………あ」

両手を上げ、大声で祝福の言葉を叫ぶスメラギ。周りには兄弟達。
そしてテーブルには色とりどりの料理が並ぶ。
そこでやっと気付いた。

「あ…今日は…」
「そーよー?今日はティエリアの誕生日!本当に忘れてたの?」
「…」

刹那の問いはこういうことか。こんな大切な、自分のことを忘れているなんて。

「おめでと、ティエリア」
「うん。おめでとう!」

周りからも祝福の言葉。
ああ、これは…

「………ありがとう」

いつになく柔らかく微笑んで感謝の言葉を述べたティエリア。それを見て驚きはしたもののすぐに微笑み返す家族。

「……座って」

刹那に手を引かれ席に着く。
真ん中に置かれるケーキも手作りなのだろう。

「はいはーい!それじゃみんなも座ってーっ!」

スメラギの声に反応して皆も席に着く。
いつもと違う食卓。皆が自分を祝っている。それがどうにも恥ずかしいような気もするが、それでもとても嬉しい。

「ではあらためて、ティエリア誕生日おめでとう!」
「…本当、ありがとう」

そうして夕食が始まった。
始まってしまえばいつもの夕食と変わらないのたが、そこにはいつもと違う暖かさがあった。
不意に、隣の刹那に手を握られる。

「どうした?」
「…誕生日、おめでと」

他は騒がしくなっていたが、小声で話す。
そうしてさりげなく手に握りしめられた小さな包み。

「…あげる」
「ありがとう」

ティエリアの笑みに刹那も笑って返したのだった。
いつもと違う、なんて今日は素晴らしい誕生日だったのだろう。
そう思ったティエリアだった。






〜後書き〜
…うん。ティエ誕文でした。
無理矢理感が否めない…。
敢えての家族パロ。
…途中、普通のティエリア中心文になると気付いてテ刹要素を付け足したという…←

読んでいただきありがとうございました。

081209


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