花の天使T

□〜土方〜6
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 だが俺は、通りの向こうから歩いてくる見知った二人を目撃する事になる。



 一人は遠目でも見間違えようのねェ天パの銀髪野郎。

 その隣を親しげに言葉を交わしながら歩くのが女とわかった時は、奴にそんな女がいたのかと単なる好奇心で目を向けた女に俺は呼吸が止まりそうになった。



 さっきまで俺が捜してたアイツ。――しかも、よく見りゃ二人は手を繋いで。



 何故だかわからねェが急に胸が締め付けられるような思いになりながらも、俺はアイツから目が離せなかった。



 それは、いつもは結っている栗色の綺麗な髪を下ろして青緑色の着物がよく似合っていたからかもしれねェ。

 化粧もして、いつもより更に綺麗で俺としたことが見惚れてしまっていたのだ。





「あれれ? 多串君じゃな〜い」



 多串じゃねェつーの。



 気の抜けた声で言った奴に俺は心中で訂正したが、口に出す気はなく代わりに紫煙を吐き出した。

 もう毎度の事で面倒になってしまったのだ。 



「土方さん、こんにちは」

「おう」



 俺に挨拶したアイツを万事屋は驚きの表情で見る。



「エッ、弥生。コイツと知り合いなのッ!?」



 弥生というのか。まさか奴の口から知らされるとは思わなかったぜ。



 はい、と答えた弥生に万事屋は不快げに表情を歪めた。



「こんなチンピラ警察と付き合っちゃ駄目だぜ。ピュアな弥生がヤニとマヨ臭くなっちまわぁ」



 怒りが込み上げて俺は奴を睨む。



「んだとテメェ、やるかコラ」

「やんねぇよ。せっかくの弥生とのデート潰されたくないんだよね」

「デートだと?」



 普段の奴なら当然売られた喧嘩は買うと思っていたが、奴が口走った言葉に可笑しくなる。



 どうせ奴の一方的な思い込みだと鼻であしらおうとしたが次に奴の口から出た言葉に、そんな余裕はなくなった。



「まだ弥生こっち出てきたばっかでさ、俺が色々案内してやってんの。あと美味いモノ食ったりベタベタしたり。なっ、弥生っ」



 後半は、よく聞こえなかった。



 胸が痛くなって――なんだ、この思いは。





 俺を断って奴と?

 まあ野郎の事だ。しつこく誘って弥生が断りきれなくなったのかもしれねェが。



「んじゃま、仕事頑張ってくれよ多串君」



 俺に会釈した弥生の手を万事屋が引いて二人は行ってしまった。





 俺は腑に落ちねェモヤモヤを抱えたまま、ただ二人の後ろ姿を見ていた。



 胸の痛みは、まだ引かねェ。




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