リク
□Dilemma〜高杉
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犬の遠吠えが響く丑三つ時――
いつもの場所に今宵も、あの男の姿があった。
月光の下、煙管をふかすその姿は様になる。
だが、それもこれまでだ。
息を潜めて俺はゆっくり近づくと腰の刀の柄に手を掛ける。
「高杉晋助、覚悟!」
抜刀して斬りかかるもかわされ、俺は身をひるがえすとすぐ斬りかかったが、またもかわされる。
――素早い。これでも俺は速さには自信があるのに。
「来やがったか。真選組」
刀を構えて俺は高杉を睨む。
「抜け、高杉」
「ククク」
俺を見て妖艶な笑みを零す高杉。
この男は俺をなめているのか。
命を狙われているのに抜刀した事がない。
仮にも俺は真選組。剣の腕は立つ。
*