花の天使U

□〜ヒロイン〜38
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 真選組の屯所は、とても広くて驚いた。

 総悟さんに案内してもらったけど迷う事もしばしば。



 仕事は家事全般だから、なんとかなるけど量の多さが大変だった。

 炊事、洗濯、清掃――全部が半端ない。



 男所帯って少し不安だったけど皆、親切で安心した。知ってる人もいるし何かと気にかけてくれるしね。





 今は掃き掃除中――



 広い庭をグルリと掃いて一周し終えようという時――縁側で座布団を枕にして寝てる総悟さんに気づいた。

 あの変な目のアイマスク、本当に使ってるんだ面白い。



 ……いつも悪戯されてるんだから、たまにはあたしがしてもいいよね、なんて思っちゃった。





 お返しよ、くすぐってやる覚悟しろー





 あたしは足音を立てないように静かに総悟さんに近づいてったんだけど、腕を掴まれて抱き寄せられた。



「キャッ」


「俺が気づかねーとでも思ってんのかィ? バレバレだぜ」



 アイマスクを外した総悟さんがニヤッと笑って何? 狸寝入り?



「俺の寝込み襲うたァいい度胸でィ。こりゃ弥生の期待に応えねーといけねーや」



 総悟さんにギュウと抱きしめられて身動きが取れない。



「は、離してください。あたし、まだ仕事中」


「弥生から襲ってきたんだろィ」

「襲ったんじゃなくて、くすぐろうと」



 首筋に生温かい感触がしてゾク、とする。――す、吸われてる



「やだッ」


「弥生、イイ匂いだ。たまんね。それに、やらけェ」



 汗いっぱいかくから制汗スプレーはしてるけど、良い匂い?



「やっ…ん」



 音を立てながら首筋を舐められたり吸われて思わず出ちゃった声に、自身で驚いて顔が熱くなる。



 気づけば総悟さんに足まで絡まされてて。



 ヤバイよ。チョットほんとシャレになんないって!




「弥生、ここ弱ェのかィ」



 舐めながら訊かないで。



「あっ……お願いだから、離してください。見られたら、どうするんですか」


「弥生が襲ってきたって言うぜ」



 遠くから誰かの声が聞こえてきた。――あの声は土方さんだ。退さんを呼んでる。



 ヤバ、声が近づいてくるよ。



 ドタドタと足音が迫ってくる。




「総悟ォォォ!! テメ何やってんだァァア!!」



 土方さんの怒声が降ってきた。



「何って野暮な人だァ見てわかりやせんか?」



 ため息混じりに答えながらも総悟さんは、あたしを離してくれない。



「わかるわッ!! なんで、こんなことやってんだって訊いてんだッ!!」

「見ての通り弥生が寝込み襲ってきたんでィ」

「襲ってんのはテメェだろッ!!」

「襲われたら期待に応えにゃいけねェ。据え膳食わぬは男の恥っていうだろィ」

「……弥生、本当か?」

「いえ。チョット悪戯しようとしたら、こんなことに」

「悪戯? 総悟に?」

「いつもされてる仕返しをしようとしたんです。ごめんなさい」



 土方さんの大きなため息が聞こえる。




「オイ総悟、それくらいにしとけ。万事屋に殺されるぞ」

「チッ、仕方ねェ」



 総悟さんに離されて、あたしはやっと解放された。





 こんな事は、こりごりです。

 もう二度と悪戯はしない事に決めました。あれ? 作文?






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