花の天使U

□〜沖田〜32
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 翌日





 弥生に会いに行くとアイツは、いつも俺に背を向けてる。



 だから俺ァ悪戯したくなるんでェ。

 それに今スゲー、ムシャクシャしてんだ。



「弥生」


「キャアッ」



 俺は弥生を背後から抱きしめた。



「悪ィ。つまずいて勢いあまって抱きついちまった」


「総悟さんッ」

「いけね、足挫いちまったかもしれねーや。しばらく、こーしててもいーかィ」

「……胸揉むの、やめてくれませんか」

「あ、こりゃうっかり失礼しやした」



 もっとこーしてたかったのに心中で舌打ちしながら離すと、振り返った弥生は明らかに怒ってた。




「反省したって嘘だったんですね」



 怒りの声音で俺を睨む弥生。



「嘘じゃねェ。弥生に会いたさで急いで来たら、つまずいちまって」



 反省してるけど、今の俺ァ虫の居所が悪ィんだ。



「昨日、晩飯ん時に土方コノヤローがいなかったからバズーカをブッ放して聞いたぜ。飯ごちそうしたそうじゃねーか」


「あ、はい」



 ムカつく。なんで土方だけなんだよ。



「俺差し置いてズリーぜ。俺にも食わせろィ、飯じゃなく弥生を


「……何かボソッと聞こえたんですけど」

「空耳でさァ」



 怒った顔で俺を見る弥生は嫌いじゃねェ。

 むしろ俺をそそって、もっとからかいたくなる。



 でも今日の弥生は雰囲気が違う。

 それはいつも結ってる髪を下ろしてるせいだが、なんで今日に限って――



 俺はピンときた。



「今日、髪下ろしてんだねィ」



 俺が髪に手を差し込むと弥生は竦んだ。




「あ、今朝チョット結う時間なくて」



 目が泳いで明らかに動揺してやがらァ。



「雰囲気変わってカワイイぜ」



 そんな言い訳、俺に通用しねーよ。



「弥生の髪、綺麗だァ」


「――ちょッ」



 髪じゃなく首筋に触れると弥生は身をよじって後退するも背後は棚。



「いい加減にしてください。これ以上セクハラすると警察呼びますよ」

「俺が警察だろーが。それにセクハラじゃなくスキンシップだって言っただろィ」



 手を見ると――思った通りだ。

 白粉が付いてやがる。



「俺の目は、ごまかせねーぜ」


「何が…あっ



 手を見せると弥生の血相が変わった。



「ついに旦那に食われたか」



 図星の証拠に弥生が真っ赤になる。



 ムカつく。腹の底がチリチリする



「どーだったんでィ? 旦那は上手いのかィ?」



 聞きたくねェそんな事。

 でも口が勝手に喋っちまうんだ。



「満足できなかったら、いつでも俺んとこ来いよ」


「…………もう、ここに来ないでください」



 顔を伏せて弥生が言った。



「総悟さんなんかキラ…」



 やめてくれ!! その言葉の方が聞きたくねェ!



「すいやせんッ」



 気づいたら俺は頭を下げてた。



「俺、旦那に弥生取られたのがスゲー悔しくて」



 弥生に嫌われたくねェ。



 ……俺の気持ち、伝えてェ。





 顔を上げて弥生を見る。



「俺、弥生のことが好きなんでさァ」



 目を見開く弥生。

 そして赤くなって戸惑ってる。



 ……わかってる。わかってんだ弥生の気持ちくらい。



「返事ァいらねェ。わかってまさァ。弥生は旦那のことが好きなんだろィ」



 黙って弥生はうなずいた。



 チキショウ!

 心臓の辺りがズキッと痛んだ。



「……わかっててもフラれるのは辛いねィ」


「ごめんなさい」
 
「構わねーよ」

「……あたし総悟さんとは、お友達になりたいです。セクハラとかなければ、総悟さんて楽しい方だし」



 ――良い事思いついた。



セフレ。その手があったか」


「違います!!」



 即行否定されて、つまらねェ。



「チッ」



 俺が舌打ちすると弥生は、ため息をつく。




「仲良く、してください。セクハラ抜きで」

「仕方ねェ。弥生に頼まれちゃー断れねーや」



 弥生がクスッと笑って俺は嬉しくなった。




「よろしくお願いします」



 ……フラれても、俺の気持ちは変わらねーぜ弥生。





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