小説みたいなの

□memory
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「何だったんだ…」
辺りは元の暗さを取り戻し、一人残ったフィエロは呟いた。

「いてて…」
「あの…大丈夫?」
突然女の子の声がすぐ近くで聞こえて、フィエロはびっくりした。なんせ、その女の子は闇に溶ける様に全身黒ずくめで顔さえも隠していたのだ。

「君が助けてくれたの?」
「ぅ、うん…ごめんなさい、驚かせちゃって」

心なしか女の子は、フィエロと距離を取っている様にも見える。
「顔、見せてくれない?」
「ぇと、それは…」
きゅ、と女の子が帽子の裾を握った。
「なんで?」
「…気持ち悪いの、私の顔…」

その時。
さっきの光は何事かと、パーティー会場から人が出て来た。そしてその内の一人が、大声で言った。

「エルファバ!またやったな!!」
その瞬間、フィエロといた女の子がそっちを向いた。

「ごめんなさい、私行かなくちゃ…」
「待っ…エルファバ!」
ビク、と女の子─エルファバは肩を揺らした。
フィエロは、エルファバの帽子を取った。

「!!!」
「っ…!!嫌、見ないで!!」
その肌は、透き通る様な緑だった。フィエロが一瞬見たその表情は、悲しみが入り交じっていて。

「ねぇっ…なんで隠すの?!気持ち悪くなんかないよ!」
「嘘!だってお父様も、誰だって皆…っ私の事…」
フィエロは顔を隠す手を剥して、エルファバの瞳を見つめた。
「…君の事気持ち悪いなんて、僕には言えないよ」
「なんで…?」
「君の緑は、こんなに綺麗じゃないか」
フィエロの手が、優しくエルファバの頬に触れた。

「緑の肌は君の特長なんだから、恥ずかしい事じゃないよ」
「っ…ありが、とう…!!」

フィエロは涙をこぼすエルファバの肩を優しく抱き、自分の中に温かい感情が沸き起こるのをそっと感じていた。










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