小説みたいなの
□Cruelty
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深緑の、大切な親友を連想させるグリムリーの表紙を、グリンダはそっと撫でた。
そして、今さっき誰かに言われた言葉を思い出す。
『貴女が悪い魔女と友達だったというのは本当ですか?!』
「悪い…魔女…」
オズの元で別れた時から、こうなる事はわかっていたのだ。だからこそ、この苦しさと辛さはグリンダにとって耐えがたい物だった。
「エルフィー…貴女は、今どこにいるの…?」
グリンダのその言葉は、まるでエルファバが生きている事を確信しているかの様だった。
「グリンダ様、30分後に国民演説が入っております」
「わかったわ…」
ふと、グリンダはあることを思い付いた。否、それは前にもやろうとしたことのある物だ。
「エルフィーはきっと、許してくれないわね…」
グリンダは軽く苦笑する。胸に堅い決意を秘めて。
「皆さんこんにちは。今日は、皆さんに取って置きの話をしたいと思います。少し長くなるけれど、聞いて下さい」
民衆の了承を確認してから、グリンダは話し始めた。
「皆さんは、私の事を『良い魔女』とし、エルファバの事を『悪い魔女』としていますよね」
しんと静まり返った中を、グリンダの声が響き渡る。
「ここで皆さんに質問です。悪い魔女ウィキッドは、どんな悪い事をしたのでしょう?」
その瞬間、民衆がザワザワと騒がしくなった。
そんな中、ボックが一際大きい声で言った。
「グリンダ様!あいつは、僕の体をブリキへと変えました!!」
「そうだそうだ!」
「猿に呪いをかけた!」
「ライオンを臆病にしましたぞ!」
それをきっかけに、口々に民衆は叫び出した。
「その悪事が全て、エルファバの善意からの結果だとしたら、どうしますか?」
グリンダがそう言った途端、民衆が怒声をあげ始めた。