BASARA
□ハニードロップ
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ハニードロップ
[ 貴方がくれるものなら全部特別 ]
side:k
「ねぇ慶次、」
「お、どうした?」
秋祭りの最中、蘭ちゃんが俺の服を引っ張った。
「何食べてんの?」
「ん?」
さっき口に放り込んだ飴。
多分、それに気づいたのだろう。
「さっきから甘いにおいがしてる。」
「…気になる?」
いい事を思いついた。
我ながらいい考えだと思う。
「じゃあ、こっち…」
「?」
思い切り腕を引っ張って、口付けた。
驚いて少し開いた口に、飴を移した。
「──っ!!」
飴をあげた後、すぐに放してあげたら、
蘭ちゃんは顔を真っ赤にして睨んできた。
ありゃ、睨まれちゃったよ。
怒っちゃったかな?
「おいしい?」
「……ぅん」
蘭ちゃんは、少し俯いて頷いた。
機嫌直してもらうために、林檎飴買いに行こうかな。
ハニードロップ
(俺もおいしかったよ、ご馳走様。)
*
side:r
「ねぇ慶次、」
「お、どうした?」
いっつもチョッカイ出してくるから、
仕返しに思いっきり服を引っ張ってやった。
そしたら、小さく「ぐぇ」って言った。
はは、ざまぁみろ。
「何食べてんの?」
「ん?」
慶次はさっきから何か食べてる。
蘭丸にナイショで。
わかってんだよ、さっきから甘いにおいがすっごいしてんだよ。
「さっきから甘いにおいがしてる。」
「…気になる?」
…気になる、といえば気になる。
でも、そこまで気になってるワケじゃない。
…やっぱ気になる。
「じゃあ、こっち…」
「?」
ちょっと頷いたら、思いっきり引っ張られた。
何する気…
「──っ!!」
あああ、あいつ…何して…!
…甘い。
甘い、けど…
うう、もっと普通に教えろよ!
ムカつくから、全力で睨んでやった。
「おいしい?」
「……ぅん」
なのに。なのに。
効いて…ない
逆にこっちがやられた。
『おいしい?』
なんて聞くから。
おいしいに決まってる。
お前から貰ったんだから!
慶次から貰った飴は、
甘い甘い、蜂蜜の味がした。
ハニードロップ
(蜂蜜は恋の味だ、って慶次が言ってた。)
*
side:k
「なぁ、どうしたんだよ、蘭ちゃん!」
「………」
何度話しかけても、蘭ちゃんは返事をしてくれない。
何か問いかけても、答えをくれない。
一体どうすれば…。
「…お前、馬鹿じゃないの?」
「え…?」
突然無視され、馬鹿と言われ。
何がなんだか、理解できていない俺に、蘭ちゃんは冷たく言い放った。
「あんな所であんなコトする奴がいるか。ばか」
「?…あ。」
なるほど。
そういう事か…あ。
「もう嫌だ…もうお前と祭りなんか…、」
「蘭ちゃん…」
ぽたり、ぽたり。
蘭ちゃんのかわいい目から、涙が零れた。
…やっちまった
「──っ!」
片手で涙を拭いてあげたら、蘭ちゃんははっとしたように顔をあげた。
今度は両手で頬を包む。
そして、まだ雫の残っている方に唇を寄せた…
べちーん!
「ばかーっ!!!」
蘭ちゃんは、俺の横っ面を引っ叩いて走っていった。
あぁ…
またやっちまったか?
『ばかーっ!!!』
…か。
嫌われたかなァ…?
明日謝りに行こ…。
ハニードロップ2
(あれは流石にマズかったかなぁ)
*
side:r
「なぁ、どうしたんだよ、蘭ちゃん!」
「………」
さっきから慶次がしつこく話しかけてくる。
こっちは話したくないっていうのに。
「…お前、馬鹿じゃないの?」
「え…?」
仕方ないから、返事してやる。
馬鹿って言ったら、慶次はきょとんとした顔でこっちを見てきた。
…わかれよ、バカ
「あんな所であんなコトする奴がいるか。ばか」
「?…あ。」
今更気づいたって、もう遅いんだよ。
もう…!
「もう嫌だ…もうお前と祭りなんか…!」
「蘭ちゃん…」
ぽたり、ぽたり。
あれ…?なんで、涙なんか…
蘭丸は泣いてないのに
「──っ!」
突然蘭丸の目元に指が触れた。…慶次だ。
涙を拭われたみたいだ。…そんなことして欲しくなかった。
慶次は膝を立てて座っていた。
慶次の方を見ると、両手が伸びてきて、頬を包まれた。
くすぐったくて目を瞑ったら、ふわりと、蜂蜜の甘いにおいがした。
刹那、自分の唇に、やわらかい感触が…
べちーん!
「ばかーっ!!!」
一度ならず二度までも。
…ばか。
そこに居たくなくって、慶次の顔を見たくなくって。
一生懸命走った。ちらっと慶次の方を見たら、ちょっと悲しそうな顔してた。
やりすぎたかな…?……そんなことない!わるいのはアイツだ。
『………、』
あの時の慶次の顔。
痛かったかなぁ…?
流石にやりすぎたかも。
明日謝りに行こうかなぁ…
ハニードロップ2
(信長様に言いつけてやるんだから!)
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