BASARA

□彼岸花
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彼岸花

[ 燃えるような赤だった ]







蘭丸は、ただぼーっと庭を眺めていた。
もうすぐ冬が来るからか、咲いている花は少ない。
それでも咲いている花を探しては、ただ眺めていた。

ふと庭の隅に目をやると、紅い、炎を象ったような花を見つけた。
他とは違う、何かが違うその花に近づいてみた。


それは、燃える炎のような紅い花だった。
その花は、ある人を連想させた。
赤で纏めた防具を身に纏ったあの人。


でもその花は、どこか悲しそうに見えた。
一輪のその花は、周りの世界から切り離されたように、孤立していた。


蘭丸は鋏を持ってくると、紅い花の茎に刃を当てた。
鋏を握っている指に力を入れようとした時、近くを濃姫が通りかかった。


「あら、蘭丸君。何してるの?」
「あ、濃姫様。見てください」


この孤立した、可相想な紅を。


「彼岸花じゃない。綺麗な紅ね」
「彼岸花?」
「そう。彼岸花って、いうのよ。…綺麗でしょう?」
「はい。」



キレイ、だなんて思わなかった。
ただ、血の色に似ている、と。

暫くして、濃姫は去っていった。
蘭丸もそれに続くように歩きだした。


誰も居なくなった庭には、紅い花だけが咲いていた。







彼岸花
(蝶に救われて、)


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