『流れる紅』

□流れる紅〜混迷〜
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レッドの捜索が決まったところで、グリーンたちはこの三日間の報告をしあうことになった。まず、ゴールドとクリスがコガネシティであった出来事を報告する。


「また、か…。」


ソファに腰を下ろしたグリーンは、両腕を組み静かに呟く。次々に起こる殺人に不信感と焦りを募らせながら、その秀麗な眉を寄せた。


「それ以外には、特に何も…。情報らしき情報は得られませんでした。」


すみません、と申し訳なさそうにクリスが言う。ゴールドも、何の成果もあげられなかったことを気にしているのか、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
ゴールドたちの様子を受けて、シルバーもまた溜息をついた。


「…いや、俺達も似たようなものだ。正規に発表されている情報以外掴めなかった。」


壁に寄り掛かった状態で、シルバーが言葉を紡ぐ。ゴールドと同じく、苦虫を噛み潰したかのような表情。彼も思うように情報が掴めなかったことに、苛立ちを隠せないでいた。


「本当にムカつくくらい完璧な犯人ね。…何にも出てこないんだもの。」
 

疲れたようにブルーは言った。たくさんのことがあり過ぎたのだ。ただでさえ、事件の情報が掴めなかった苛立ちが募っていたのに、追い打ちをかけるようにレッド失踪の発覚。

目を労わるように手で覆うブルーに、イエローは心配そうな表情をしつつも新たな情報を提示した。


「僕たちも、殺人事件に関しては、あまり情報は得られませんでした。」

「殺人事件に関してはってことは、その他に何かあったの?」


手で目を覆ったままの状態で、イエローに問いかける。イエローの言葉を正確に理解した上での言葉。ブルーの疑問に答えたのはグリーンだった。


「ああ、事件には関係ないかもしれないが、だからと言って無視もできない。」
 

グリーンの言葉に、ブルーは目を覆っていた手を下ろし、彼が続けた話を聞いた。グリーンが続けざまに言った内容に、眉を寄せたのは黙って話を聞いていたオーキド博士だ。研究者という立場であるが、彼はポケモンを掛け替えのない友として考えている。だからこそ、ポケモンを傷つける存在が許せないのだろう。無論、それはここにいる全員に言えることであるが。


「グリーン、それでお前はどう考えておるんじゃ?」
 

険しい表情のままで、博士は己の孫に問いかける。


「一度、詳しく調査してみるべきだと思う。…殺人事件と時期が重なっているし、何か関係があるかもしれない。」
 

グリーンの言葉に博士が深く頷いた。グリーンの言葉は、博士も予想していたものであった。確かに、殺人事件に関係があるにしろ、ないにしろ、これは調査すべきだろう。そして、ポケモンたちに刀傷があったのなら、殺人事件と何かしら関係があるかもしれない。
被害者の中には、刀によって殺害されたものもいたからだ。


「ならば、一度準備を整えてから、皆でいかりの湖に向かうのがいいじゃろう。…少しでも、疑いのある場所には単独で行くんじゃない。」

「…分かったよ。」
 

博士の言葉にグリーンは少々困ったように返事をした。博士の言葉がなければ一人で調査に行くつもりだったのだろう。孫の様子に、博士は仕方ないといったような眼をしていた。


「(全く…、似た者同士なんだから…。)」


二人のやり取りを見ていたブルーは、心の中で苦笑した。口ではどんなことを言っていても、レッドとグリーンは性情がよく似ているのだ。出会った時は遅かれど、ずっと二人を見てきたのだからそれくらいは分かる。

グリーンだけではない。レッドのことも、多少なりとも理解している。いくらレッドが姿を消そうが、自分たちに隠し事をしていようが、その心の中にあるものだけは見誤っていない。間違えてなどいない。


「(…レッド、今…どこで何をしてるの…?)」
 

記憶の中にある彼の笑顔が、酷くぼやけて見えた。その存在をかき消すように、儚い光に包まれるレッドが、ブルーの中に静かに佇んでいた。





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